How High???? feat. Nekes

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  • パーティーを楽しむ人にとって、欧州のクラブシーンは少なからず意識してしまうものだ。遠く離れた日本だからこそ、なおさらそう感じてしまうのかもしれない。その意思が高じると、現地のシーンを体験するために海を越え、そのまま定住してしまう人もいる。渋谷Amate-Raxiにて開催されたHow High?を主催するRyokeiもその一人。出演者のP-Yan&Shake-Mも同様に、ベルリンのシーンを肌で感じ、現在はDJとして都内を中心に活動中だ。ゲストに招かれたYoskeは今もベルリンを拠点とし、日本人アーティストKaitaroと共にNote Recordsを主宰。自らの作品はもちろん、ルーマニアのSeppやInner、Ztrlといった有望株による通好みな楽曲を発表している。もう一名のゲストとして、彼らにとってのヒーローであり、2000年代以降のミニマルハウスシーンを最前線で牽引し続けてきたレーベルOsloのオーナーNekesが初来日。特別な一夜への期待が高まるラインナップとなった。 オープンからのウォームアップを担当したのはYoske。リズムの跳ねやベースラインで、フロアをディープになりすぎない絶妙な塩梅で仕上げていく。ベテランらしい落ち着きと、現場で鍛えられた直感を存分に活かしたDJであった。続くRyokeiは徐々に人が集まるフロアに対し、より動きのあるディープハウスを投下。温度感をキープしながらも高揚感をもたらし、来るメインゲストへの期待を高めていく。Nekesはパーカッシブなフレーズを交えつつ歯切れのいいグルーヴでフロアの雰囲気を整え、自らの色に染めるDJ。淡々としながらもスモーキーな感触をキープし、気づけばアシッド的な楽曲もプレイするなど、独創的な展開を途切れなく続けていく。ゲストでありながら自分は主役ではないとでも言うようなフロアのコントロールに主体を置いたプレイ。アップリフティングなトラックに頼らずとも、セットの完成度の高さで強烈な印象を残した。メインフロアの締めはP-Yan&Shake Mが担当。Nekesが築いた強固な基礎に色や形を積み上げていくような奔放な選曲で、終盤でありながらも観衆のテンションを落とさず保ち続ける。方向を変えすぎないぎりぎりでジャンルに縛られない選曲を行うセンスが、彼らのDJをスペシャルなものにしていることは間違いないだろう。ラストのB2Bは出演者全員が参加。ロングパーティーの理想形と言える、音の波に身をゆだねられる選曲が心地よく、時の流れを忘れてしまうような流れを保ったまま終了となった。 会場となったAmate-Raxiは、なかなかミニマル・ディープハウスのパーティーが行われているイメージが無かったため、実際に訪れてみるまで一抹の不安を抱えていたが、フロアを囲むように配置したサウンドシステムや規模感のバランスも良く、音とムードに没頭することができた。この日はラウンジがややアップテンポだったため、上下階で別々のパーティーを行っているような印象も受けたが、オーガナイズ次第で様々なジャンルに対応できる可能性を感じられた。キャパシティや開催されるパーティーの傾向によって、おおよそクラブ・イベントスペースの「使い方」は認知されているように思える。しかし、それに縛られることなくパーティーの理想形を追求することで、他にはないムードを創り出したHow High?は、各アクトの抜群のDJも相まって印象深いパーティーとなった。ベルリンを経験し、広い視野を身につけた彼らだからこそ、パーティーが飽和しつつある東京でも、ヨーロッパの模倣にならない形で新たな可能性を示し、次に繋がる突破口を開けたのかもしれない。
RA