Komamo'11 ~deep Autumn~

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  • 今年も東京大学駒場キャンパスにて、野外フェス komamoが開催された。日本の大学の学校祭イベントで、クラブミュージック、その中でもテクノに焦点を当てたイベントはなかなかなく、しかも6年もの歴史を持つイベントというのはここにしかないであろう。日本最高峰の大学で行われる、唯一無二の野外音楽フェス、それがkomamoである。 Komamoはサークルや団体等は運営に絡んでおらず、今回のkomamo’11はオーガナイズ、ブッキング等ほぼすべてをオーガナイザーの荒木氏が請け負い、氏の友人やOBの方々がサポートするという形で運営されている。そんな完全に非営利でインディペンデントなイベントkomamoに、今年の秋もバラエティ豊かで実力あるメンツが集まった。 1日目は先ずオーガナイザーの荒木氏の、フェーダーさばきが光るデトロイティッシュなプレイでスタート、続いてライブを行ったorkorkorkは、ディジェリドゥによる低音のうねりに、トライバルとインダストリアルの隙間を縫うようなダウンテンポなトラックが組合わさる、オリジナリティあふれる楽曲を披露、続いては都内のクラブでも積極的にDJを行うaola氏が硬質なテックハウスからファンキーなテクノまでを正確無比なテクニックでプレイ。1日目の前半戦を締めくくった。 会場内にじわじわと人が集まってきた頃に登場したのは、先日レーベルabend kollektivを始動し注目が集まるLyoma氏。渡独し現地でDJとして活動していた氏は、ファンキーなテクノを中心としながらも合間にJeff MillsやDonna Summerといったクラシックを挟む貫禄のプレイを行った。Lyoma氏に続いて、一日目最後のDJを行ったTOKYO No.1 SOUL SETの川辺ヒロシ氏は、氏の長い活動歴、DJ歴に裏打ちされた、高揚感のあるグルーヴを途切れさせなく、終演までの2時間、日が暮れるにつれ集まってきた多くのオーディエンスを満足させた。 2日目はtajimi tomotaka氏のヴァイオリンソロからスタート、その美しい音色にkomamoのステージを通りがかった学生からお年寄りまでもが足を止め、演奏に聴き入っていた。Tajimi氏のバンド演奏ではヴァイオリンの他、ピアノ、ギターとSEが加わり、tajimi氏は足下のエフェクター等を駆使しつつ濃厚な音空間を演出した。続いて、先日Kaito aka.hiroshi watanabeのプロデュースでアルバム"night of the vision"をリリースしたmingussがライブで登場。Hiroshi watanabe氏の繊細な打ち込みのバックトラックに、Mami konishiさんのヴォーカル、キーボードと、管楽器の生演奏が加わる、美しく、かつダイナミズムのあるライブとなった。 2日目後半になって登場したのは、Yore Recordsから数々の優れた作品をリリースしているKez YM氏。氏のDJは、ファンキーであることを主眼に選曲されたディスコ、ハウスを、EQ、フェーダー、エフェクターを最大限に駆使してミックスするスタイルで、オーディエンスを大きく盛り上げた。Kez YMに続き登場した、都内でのアンダーグラウンドな活動が評価されるYamada the Giantは、プログレッシブ〜テックハウスを絶妙なさじ加減でミックスし、komamoを締めくくった。 会場の音は、音量は大学側の要請があったらしく例年よりも低く設定されていたらしいが、バランスのとれた、規模的に考えると優れた音像だったように思える。デコレーションも会場には施されており、楽しんで踊れる会場作りに対しての、komamoスタッフのこだわりと努力、心意気が感じられた。 オーガナイザー荒木氏と、その友人によって2日間に渡って運営されたkomamo’11。東大という環境でクラブミュージックを愛好する人々が集まり、若者が主体となって、このようなイベントを行っているのは素晴らしいことである。だが、PAが不在になる瞬間がある等、人手が不足していると感じる時も少なくなかった。そのため、荒木氏が休む間もなく業務に奔走していたのが印象に残った。 長い歴史があり、十分に告知等もされていたにも関わらず、komamoという“イベント”を目当てに足を運んできた人よりも、“出演者”を目当てに来ている人のほうが多いように感じた。また、客層も主に学外の人たちがほとんどで、東大生の数は割合的に少なかったように見えた。どのアクトも素晴らしいものであっただけにそれが残念でならない。そのため、もっとこのkomamoというフェスがどういうものであるか、その実態を知る機会がこの先多くなれば、komamoという場の素晴らしさに気付く人ももっと出てくるのではないかと思う。筆者自身も駒場東大の現場に足を運ぶまでは、名前は知っていたが、どれだけの規模で、どのような雰囲気で行われているのかは、今回現地で体験するまで知らなかった。そういった人はまだまだ多いのではないだろうか? またこれまでkomamoを運営してきた東大生たちの意志を荒木氏が継ぎ、氏のバイト代とカンパによって、今年もkomamoが無事開催された訳だが、その荒木氏の意志を継ぐ者はまだ現れていないという。東大生、もしくはこれから東大に入りたいと意気込む若者は、是非荒木氏の意志を継ぎ、伝統あるkomamoを次のステップへと押し上げてほしい所である。
RA