AOKI takamasa Photography

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  • フォトグラファーには大きく分けて2つのタイプがあると思う。「特別な瞬間」をその現場に行って撮影し作品とする写真家と、何気ない日常の風景にシャッターを切り、それが「特別な一瞬」であることに気付かせてくれるような作品を提示する写真家である。 AOKI takamasaは明らかに後者の写真家であり、AOKI氏の写真は私たちが通り過ごしてしまうようなものを撮影し、氏の手腕によってその瞬間はより鮮明で活きたものとなる。(たとえモノクロであっても、である。)また、AOKI氏の作品は、作品に内在する情報がシンプルであることによって、写真の枠外の風景や、その瞬間がどういうものだったかを考えさせられる、想像力をかき立てられるものになっている。このシンプルさ故の強度はAOKI氏がつくる音楽作品とも共通している。 AOKI takamasaは高木正勝とのプロジェクトSilicomを経、パリ、ベルリンと拠点を変えつつ、Progressive Form、op.disc、Commmons、Raster-Notonなど様々なレーベルから音楽作品を発表する傍ら、自らが様々な国、都市を越え活動する過程で撮影した高精度の写真作品を主に自らのBlogで発表してきた。そんなAOKI氏の写真展 “PHOTOGRAPHY” が山梨の中心甲府から少し離れた、北杜市長坂町にある、ギャラリー兼カフェのGallery Traxにて開催された。この展覧会ではAOKI氏の写真を、PCなどの画面を介さずに観ることが出来、作品のエネルギーをより純粋に、細部にわたって感じられる貴重な機会となっている。 Photo credit: Tomohiro Hasegawa 11月12日にはAOKI氏が、氏の学生時代からの盟友であり、辣腕のDJでもあるKohei Terazono、AOKI氏がtumblrにて知り合ったという、L.A.シーンからも高く評価されるビートメイカーBun / Fumitake Tamuraを招いて、3人が音楽を担当し、写真とともにGallery Traxとその周囲の空気を楽しめるパーティーが行われた。午後3時から始まったパーティーでは、まずライナーノーツや翻訳等を幅広く手がけるKohei氏が、日が段々と暮れていく時間帯と穏やかな土地柄にマッチするようなダウンテンポなトラックをプレイ。AOKI氏は氏が影響を受けたと認めるJ Dilla系統のビートを中心とした力強いDJを披露した。続くBun氏は所謂Hiphop / R&BのDJとは一線を画すような、ジャンルに縛られない深みのある選曲でパーティーを彩った。その後は3人が緩やかに入れ替わりパーティーの音楽を担当した。3人のかける音楽とともに、東京、名古屋、大阪等からパーティーに参加した人々は、用意された美味しい食事とドリンク、そしてGallery Traxの工房にて作られた、家具やベンチ、ハンモックで、都市とは異なる山梨の緩やかな時間の流れを楽しんでいた。来客した人々の中には展示室そのものの良さに心をとらわれる人も多く、保育園を改装したというGallery Traxには、街の雑居ビルの一室を利用したようなギャラリーにありがちな窮屈さがなく、ずっとそこに居たくなるような特別な空間であったことも追記しておく。 Photo credit: Yuna Yagi 12日はAOKI氏と交流関係にあるDJ、クラブ関係者等が多く集まり、さらに、周りは畑に囲まれ、街灯もまばらな、外界と隔離されたような場所柄も相まって、AOKI takamasaのアルバム名でもある、“Private Party”という形容がぴったりな、素晴らしいパーティーとなった。その一方で、AOKI氏の写真展はもっとアクセスし易く、多くの人が観られるような場で開いてもいいのではないか?とも思った。AOKI氏についてそれほど知識のない人や、テクノ、エレクトロニカ等の音楽に興味が薄い人でも、氏の写真作品を観ればAOKI氏の魅力を十二分に感じ取ることが出来るはずである。そのための機会がこの先もっと増えれば良いなと感じた。 今年から拠点を大阪に移したAOKI takamasa。海外で多くの経験を積んだAOKI氏が、これから日本で音楽、写真両面でどのような表現活動を行っていくのか、これからもより一層目が離せない。
RA