The Please - 's-Gravendijkwal EP

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  • The Pleaseという名からすると、まるでその辺に転がっているインディー・バンドのようだが、このデュオにとっての初の公式デビュー盤(そして、この謎めいたオランダのレーベルPurple Mazeにとってもこれが1枚目のリリースだ)はまったく正反対のサウンドを打ち出している。このEPに収められた4つのトラックは、それぞれ無作為に書きなぐった音のパレットのごとく、ぎくしゃくしたヒップホップやグライム、壊れたハウストラックなどが見事なまでに混在しているのだ。テンポはトラックによってバラバラだし、途中からトラックが始まったような感じがしたと思えばぶっきらぼうに終わってみたり、とにかくEP全体が非常にラフな雰囲気で、それでいて何度も聴き返してみたくなるような不思議な魅力がある。 平板なキックを引きずりながら始まる"Abodigital Dishwasher"は105BPMのテンポで泳ぎながら柔らかなパッド、騒々しく揺れるパーカッションがミッドレンジを埋め始め、"ooooooh"という呻きのような男の声が絡んで清濁を併せ呑んだようなサウンドスケープを展開する。"Laserguided Weapon"はよりクリスプな質感で、ガラス細工のような音色や震えるキー、よろめくヒットが小刻みな波にすべて乗っかりながら進んでいく。"No More Please"は濁った水の中に沈み込んでいくようなディープさがある。短く乾いたクラップがトラックを引っ張りながら、ミュートされたキーはまるでドブ川の中を進む一条のレーザービームのように貫いている。EPの最後を飾る"Sealed with a Kiss"はうってかわってビーチへ直行するようなさわやかさ。キラキラと輝くストリングスとキー、モータウン調のサンプルが頭上高くに広がっていく。エキセントリックでありながらも、愛すべき魅力を持ち合わせた好EP。
RA