Farben - Xango

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  • Jan Jelinekが昨年Farben名義でのリリースを再開して以来、これが2枚目のシングルとなるのだが、前作同様なんともつかみどころのない内容である。まあ、それもさもありなんといったところで、そもそもJelinekのFarben名義での作品はそうした若干の不安定さを内包してきた。ダンスミュージックのようでいてダンスミュージックではないと言うべきか、かならずしもそれらしい機能性は見据えていないようなところがある。単なる「トラック」というよりは、「作曲」に近い感覚で作られているのだ。本来低域を担うはずのキックドラムは頼りなさげに拍を刻んでいる。"Xango"でのアシッド的音色はおそらく303で作られているはずだが、およそそれらしい鳴り方ではなく、Jelinekはむしろ我々を困惑させるためにそのサウンドを使っているようにも思える。しかし、これこそがエレクトロニック・ミュージックにおけるひとつの変化のかたちだと言っていいだろう。もはや4/4における実験という要素は限りなく希薄だ。DJでプレイできるようなタイプのレコードではないし、さもなければアート・スペースのような場所に追いやられてしまうかもしれない。特定の時代性から遥かに遊離してしまったかのような感覚をおぼえさせる、これまでになく特異なレコードである。もしかしたら未来のクラブではこんな音楽が普通にプレイされる日が来るのかもしれないが、過去にはそんな場所はおそらく無かったはずだ。
RA