Rice feat. Rhadoo at Mago

  • 日本のベストクラブのひとつ、名古屋MagoのレジデントパーティーがRhadooを迎え入れた。
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  • RiceはGとTanukeepという2人のDJが名古屋のClub Magoでオーガナイズしているパーティーで、そもそもの始まりは10年以上も前に当時ベルリンに住んでいた2人がとあるパーティーで出会い、意気投合したことがきっかけだったという。帰国を機にMagoをホームにしてパーティーを始めると決めた2人は名古屋の地に移り住み、確たるポリシーを持って彼らのペースで2011年から続けているが、そのことからも如何に彼らがMagoという箱に魅せられいるのかが窺える(先日公開した名古屋の音楽スポットを紹介した映像でMagoについても掘り下げている)。ブースに立つことも決して敷居は低くないはずで、かつ箱のレジデントパーティーのひとつとして認識されるに至る現在があるのは、DJそしてオーガナイザーとしての信頼関係を着実に築いてきたからこそであろう。ポリシーとはレジデントの2人のDJを基盤に、直でプレイを聴いて衝撃を受けた信頼の置けるアーティストをゲストに迎えパーティーをメイクするというもの。そのゲストの中にはZipやSammy Dee、Daniel Bell、DJ Masdaをはじめとする世界的に活躍するアクトから、日本で著名なMoodman、地元拠点のShiba、Masa、GoemonといったDJ/プロデューサーがこれまで存在するが、今年の第2回目の開催となった今回のRiceのゲストは初出演となるRhadooだった。これまでの人選からもパーティーの持つ音楽性が明確に示されていたからこそ、Riceのフォロワーからするとこのブッキングは意外に写ったはずだ。後日談だが2009年の5時間におよぶ彼のミックスを聴いて迎えることを決意したという。プロダクションやオンラインミックスを聴いてブッキングをすることはよくある世の中だが、頑なにポリシーを貫いてきた彼らにとっては、新たな一歩を踏み出す大きな変化を迎えた会となった。 オープニングはTanukeepが務めた。足元を固めてくるようなディープなテクノ、ハウスをベースに、まるで階段を登るように着実に次の展開へと積み重ねていくミックスが印象的で、少しずつフロアに集まってくるオーディエンスを着々とロックしていた。時間が深まるにつれしなやかなグルーヴが織りなされ、上げていくのではなく徐々にテンポを落としているのではないかと体感するほどに深い溝へとハメていくプレイは圧巻の一言だった。続くRhadooは序盤、ミニマルを軸としながらもトランスの背景を感じる選曲で、ダンサーの身体を操つるかのごとく急所を突いてくるその展開は、かつてDonato Dozzyが提唱したマイクロトランスを想起させた。その後もブレイクビーツやフューチャリスティックなテクノ、エレクトロまでとジャンルを横断しつつ、時折アブストラクトな要素をチラつかせるがそちらには振り切らないという、実験を試みているような場面を幾度と感じたプレイだった。ボーカルもののハウシーな曲がかかりブースを見上げるとGにバトンタッチをしたところで、そこから彼は一旦フロアをフラットな状態へもっていき、ゆっくりと地盤を築いていきながら、独特の艶かしさが漂う音色と攻めのグルーヴで、確立されたG節を炸裂していた。今年レーベルとしても始動したRiceのカタログナンバー1番のGoemonの"FM Bass"がかかった頃にはフロアにそれほど人は残っていなかったが、それはそれで自然で、ある種ぜいたくな時間だったと思える。 名古屋では金曜日は集客がなかなか難しいと聞いていたが(このパーティーの翌日に惜しまれつつも閉店を迎えたDominaのオーナーに話をうかがった際もそう語っていた)、ピーク時はそれなりに盛況な様子だった。近年とくに東京や大阪のクラブでは外国人観光客の割合が多くなってきている印象だが、このパーティーではほぼ見かけなかったように思う。ともあれ音楽面で総じて感じたのは、TanukeepとGのプレイがRhadooに全く引けを取らないクオリティーだったということ。Magoの音の良さは格別で、あのフロアに立つとどんな音楽でも受け入れられるという心の解放がまず起こるから不思議だ。そうした安心して身を預けられる極上な環境で繰り広げられる、レジデントのブレのない確かなプレイに裏打ちされたパーティーは、遠方からでも訪れる価値がある。実際のところ筆者の知るかぎりでも、この一夜を目がけて東京や大阪から遊びにきていた知人の何人かに遭遇した。そうしたサプライズもパーティーの醍醐味のひとつだ。
RA