Bacardi “Over The Border” feat. Little Simz & Kampire

  • イギリス、ウガンダ、日本から先鋭アーティストが集まり、ブランドイベントで個性豊かなパフォーマンスを繰り広げた。
  • Share
  • 音楽とアートをペアリングさせる「カルチャー・カクテル」を標榜する“Over the Border”は、ラム酒製造メーカーのBacardiが、方法論とジャンルの両方を超えたボーダーレスなアート的交流を促進すべくスタートした。これはもちろん、Bacardi自体の挑戦的な出自と、文字通りの国境(Border)を超えた活躍に目配せしたものだ。 渋谷駅近辺で終わる事なく続けられているインフラ整備の一環で建てられた、無個性な最新高層ビルの中で行われるブランドパーティーとはいえ、イベント自体はかなり興味深いものになることが予想された。ヘッドライナーはイギリスのラッパーLittle Simzで、昨年のTaicoclubでのパフォーマンスが好評を得ての再来日。彼女はウガンダのDJ兼ライターKampire、そしてローカルDJのLil Mofo、Yukibeb、DJ Sarasaにサポートされての登場となった。月曜の夜としては、控えめに言っても贅沢なラインナップだ。 渋谷に最近オープンしたばかりのヴェニューであるStream Hallに入ると、第一印象は先が思いやられるようなものだった。クラウドは自称インフルエンサー達や、この招待客限定イベントのチケットを獲得できた一般客が入り混じっていて、ダンスするよりも、展示されているアートワークの前でセルフィーを撮るほうに一部の人々は興味があるような様子だった(アートワークのサイズもInstagramコンテンツにぴったりなサイズのものがあった)。例えば、Lil Silvaの”Seasons”のアンセム調なベースラインが鳴っても、皆がダンスフロアに駆け寄ってこないなんて、何かがおかしい。だが、東京で最注目なDJのひとり、Lil MofoがUKガラージュとUKファンキーの楽しいセットを彼女らしい個性溢れるエネルギーでプレイすると、さすがにフロアは盛り上がった。ジャンル横断といえばお手の物のDJ Sarasaは、ソロでファンク、ディスコ、ハウス、ソウルフルなR&Bセレクションのリミックスに続き、ベースミュージックユニットXXX$$$の片割れとしてハードなエレクトロニックビーツをプレイしていた。
    2階上の広いイベントスペースでは、観客はよりパーティーに意欲的で、Kampireがプレイをスタートするとメインルームが満杯になった。きっと彼女のセットがアフロビートの初体験になった観客が沢山いたに違いない。観客のリアクションから判断しても、とても歓迎されていたようだ。BryteやPrince Kaybeeの人気曲でじりじりと盛り上がり、セット全編に渡り良い雰囲気に浸っていた。そして遂に、Little Simzが大トリを飾る時間に。2016年の『Stillness in Wonderland』収録曲”Bad to the Bone”のライブバージョンと、2018年のシングル”Offence”、“Boss” は間違いなくハイライトだった。ロンドン出身の彼女が自分の水入りボトルを最前列のファンに浴びせるや、彼らは大いに盛り上がり、クラウドと共に盛り上がる時、言語の違いはボーダーにはならない事を、彼女が気持ち良く証明してくれた。
    Photo credit / Masanori Naruse
RA