Sónar 2018: Five key performances

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  • エレクトロニックミュージックのフェスティバルが、初開催から25年も経ってなお一層多くの人々を惹きつけているとは、実に信じ難いことだ。しかも、毎年のように定義が変わる、カッティングエッジな音楽に力を入れているフェスティバルであることを考慮すると、尚更驚嘆に値する。それこそが、世界最重要のエレクトロニックミュージックのフェスティバルと呼ぶにふさわしいSónarだ。このスペイン・バルセロナで行われる大規模イベントは、今年また新たな節目の年を迎え、119カ国から12万6千人もの人々を動員し、地元客と海外からの客の割合はほぼ半々だった。 なぜSónarが毎年、若者や音楽好きのクラウドを惹きつけ続けることができているのか、その理由はすぐに理解できる。世界クラスのイベント制作と、最近の前衛志向な実験主義者たちと並び、尊敬を集めるヴェテラン勢が揃うというラインナップの組み合わせはもはや無敵であり、参加者の多くにとって、Sónarは最もパワフルなフェスティバル経験として残り続けるものだろう。 以下に述べるのは本年度からの5つの主要パフォーマンスだ。
    Despacio 「部屋の中央のあたりの音が一番良い」と、James Murphyの若干うんざりとした様子のアメリカ訛りの声が会場に響いた。「DJブースの前じゃない。誰も中年DJ3人の写真なんて要らないだろ」と、Murphyは巨大スピーカーに囲まれたほぼ漆黒の空間にいっぱいのクラウドを見渡しながら言う。ここから数時間、彼はDespacioのメンバーとして、2ManyDJsと共にレコードをプレイした。このコンセプトとは?暗い場内、ファットなサウンドシステム、112BPM以上ではプレイされないヴァイナルの入った箱多数、といったところか。フェスティバル内でクラブナイトを主催した3人はスローモーなディスコ、アコースティックギターのジャム、クラウトロックなどを行き来するプレイを見せていた。ビートマッチをすることもあれば、曲間に静寂を挟むこともあった。カッティングエッジな音楽でいっぱいな中で、このレトロなテーマ性は際立っていた。
    Kampire 友人2人を両脇に引き連れたKampireは、晴れた金曜の午後のSonarVillageステージという、これまでの彼女のキャリアの中で最も規模の大きい枠でのプレイを敢行した。Kampireは、東アフリカ中から集まったサウンドを打ち出してくる刺激的なレーベルNyege Nyege Tapesを首謀するコレクティブの一員で、地元シーンでエレクトロニックミュージックを推進している。彼女がパーカッシブなハウスとディスコをCDJでプレイする横で、友人が踊りながら、携帯電話でセットの模様をライブストリーミングしていた。デイタイム枠はKampireのサウンドに完璧にマッチしていて、活気あるクラウド達がシャッフルするビートや味のあるディスコに合わせて揺れていた。彼女のセットは、たとえ彼女の地元カンパラでも、ヨーロッパのどこかの首都であったとしても、とびっきりのリズムとキャッチーなヴォーカルにはどんなクラウドも抗えないということを証明してくれた。
    DJ Harvey 土曜の夜、6時間にわたり、DJ HarveyはSonarCarステージをクラブに変貌させた。このヴェテランDJはトライバル風のハウストラックと陽光を感じさせるバレアリックをブレンドし、フェスティバルの中でも最も長時間の枠にあって、スムースさと安定感を保ち続けた。フェスティバルでのDJセットといえば、素早く盛り上げるためにインパクトの強いバンガーをミックスしてくることに終始しがちだが、Harveyはトラックをじっくりと聴かせ、スムースな遷移と着実さのあるミックスをしていて、クラウドの中にリラックス感のあるヴァイブを創り出すことで、ステージ前に詰めかけるのではなく、友人同士がグループになって身を寄せ合い、DJに背を向けて踊っていた。親密なステージはサンセットビーチパーティーへと化し、Harveyの6時間枠はフェスティバルでの抑制されたセットにおける名人技といえるものだった。
    Octo Octa Octo Octaによる鮮やかなハウストラックは、力強いものでありながらも、いわゆるビッグルーム向けというわけではない。キックを轟かせ、ベースラインを唸らせ、壮大なコードを鳴らせば、大抵のフェスティバルのクラウドは踊り続けるものだが、Octo Octaのトラックはそうした要素の代わりに、豊かでジャジーなシンセのメロディに基づいている。ブリープ音、織り込まれるアシッドなライン、時たまのブレイクダウン、そんなサウンドが結果としてSónarのぎゅうぎゅう詰めのダンスフロアを制し、数千人もの人々をひとつにした。彼女はカタログ曲を挾みながらライブでプレイし、基本、混沌とした音に突き進みながらも、”Fleeting Moments Of Freedom (Wooo)”で夏を呼び起こしたりと、雰囲気はどんどんと変わっていった。このセットは、たとえ大舞台であっても、メロディックな雰囲気で圧倒することができることを証明してくれた。
    Ben Klock & DJ Nobu Ben Klockとの初のバックトゥバックセットの約3分の1が過ぎた頃、DJ Nobuは、この週末に聴いた中で最も巧みなトラック遷移を見せてくれた。 Klockがプレイするヴォーカルに彩られたドライブ感のあるチューンに続き、Nobuはループするヴォーカルの断片を加えつつ、パーカッシブな90年代テクノトラックであるRegisの”Purification”をもってきた。2つのヴォーカルは完璧にシンクロし、Nobuがフェーダーを上げるにつれ、場の緊張感が高まってきた。素晴らしいセレクションと絶妙なタイミングでのミックスが持つ力に呼応し、Klockがこの遷移のクライマックスで両手を挙げると、クラウドは叫び出した。こうした瞬間はセット中を通して見られ、両DJがそれぞれ持つ何十年もの経験が結びつき、反映されたものであった。Nobuはより繊細でループの多いトラックを好む一方、Klockは一貫として大舞台への理解を感じさせるサウンドをプレイしつつ、やはり流石のBerghainのDJとして果敢にマッシヴなベースラインを打ち出しては、クラウドに喝を入れていた。 
    Photo credit / Ariel Martini for Sónar - Lead, DJ Harvey Nerea Coll for Sónar - Despacio, Fernando Schlaepfer for Sónar - Kampire, Diplo, Kode9, Laurent Garnier, Little Simz Alba Ruperez - Octo Octa, Ben Klock & DJ Nobu, Jeremy Underground & MCDE Nash Does Work - Absolute Terror
RA