Midori Takada in Chicago

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  • Midori Takadaが初のアメリカ公演を行った。これは、過去2年の間に彼女の音楽がいかに遠くまで伝わり広がったかの表れといえるだろう。つい最近まで、彼女のデビューソロアルバム『Through The Looking Glass』を聴ける方法といえばYoutubeだった程だ。彼女はこのレコードでマリンバやタムはもちろん、コーラのボトルまでも演奏して、夢遊的な音の旅を創り上げた。CDでは一度もリリースされたことがなかったため、このミニマリストの名盤のオリジナルヴァイナルの価格は750米ドル(約8万3千円)まで跳ね上がった。2017年、ニューヨークのレーベルPalto FlatsとスイスのレーベルWRWTFWWが協力し、2種のLPをリイシューしたことでこの状況にも変化が起こった。 月曜日、Takadaはシカゴ美術館のRubloff公会堂で、緊密かつ荘厳なセットを披露した。収容人数950人の着席型ヴェニューは普段は劇場として使用さえることが多い(もともとは350人収容のFullerton Hallでの公演が予定されていたが、より広い設備が必要になったのだ)。Takadaは『エレクトラ』や『リア王』などの劇作品で知られるパフォーミングアートグループSuzuki Company Of Toga(SCOT、富山県利賀村を拠点とする演出家・鈴木忠志のグループ)とも仕事をしたことがあり、自身の身体を使って表現をするパフォーマーなので、広くなった空間は彼女のサウンドや動きのコントロールを増幅させていた。 照明が暗くなると、公会堂の後方からTakadaが登場。シンギングボウルで煌めくようなピッチの音を繰り返し鳴らしながら、中央の通路をゆっくりと降り、シンバルやタム、ゴング、マリンバの並べられたステージに上がった。彼女はそれぞれ違う音を持つ楽器の間を行き来しながら、彼女ならではのやり方で、90分近く音を織り上げていった。 もちろん、使っていたのはパーカッションだけではない。Takadaは自身の声を使って、なにもない空間に魔法をかけ、音が形となり、夢心地な世界を作り上げた。パフォーマンスの間、観客はほぼ沈黙していたものの、やはり物音はあった。あちこちから散発する大きな咳込み、きしみ音、カメラのシャッター音、ささやき声といったものがわずかにサウンドに影響したものの、Takadaがクラウドに対して示した超越的なサウンドとコントロールは、まるでクラウドの個々人と完全に通じ合っているように感じられたため、それと対峙すればほんの些細な事だった。 Photo credit / Maria Tzeka
RA