Powder at Nowadays

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  • 昨年末にNowadaysのインドアスペースがオープンした頃、果たしてJustin CarterとEamon Harkinという確立された強いブランド力を持つ2人が、彼ら自身のスタイル以外のさまざまなスタイルに対応できる、「Mister Saturday Nightが運営するクラブ」というもの以上のヴェニューを作ることができるのかどうか、という疑問の声が上がっていた。そして最初の6ヶ月が過ぎ、そうした疑問が杞憂であったことが明らかになった。もちろん二人は、月に一度開催のMister Saturday Nightと、夏季に屋外で毎週末行われるMister Sundaysをホストしているが、彼らは以前からPhysical Therapy、Aurora HalalのMutual Dreaming、Unterなど、かなりラディカルなパーティーにも関わっており、それらのパーティーは現在、Nowadaysをホームとして活動中だ。CarterとHarkinの2人は今や、シーン随一の評論家の一員として転身したと言えるだろう。 それに、 Nowadaysには素晴らしいところが沢山ある。特に夏の間は尚更だ。CarterとHarkinは屋外エリアにDJを呼び、Backyard Listeningシリーズと銘打って午前2時まで開放している。ニューヨークにこれほど居心地が良くて広く、質の良いオルタナティブな音楽プログラムで盛り上がれるチルアウトゾーンは他にはない。とある金曜の夜、ローカルDJのCole Evelevが季節にぴったりのファンクやレゲエ、アフロビートなどでエリアをウォームアップし、徐々にアンビエントやダウンテンポにスイッチしていった頃、インドアスペースではPowderがその夜のフライトに向けての”離陸”をスタートした。 Powderのフライトの上昇ぶりは着実ながらも繊細なものだった。テンポはスローなまま、決して125BPMを超えることはなく、ほぼ一晩中120BPM前後でホバリング飛行していた。ビルドアップし、また緩めながら、リズムとテンポを安定して保つという彼女の手際の良さは、ダンスフロア側でも数時間で理解できた。忍耐と慎重さは彼女が持つ素晴らしい武器だ。この日はトラックをじっくりと聴かせるプレイをすることが多く、彼女のミックスは焦りがなく確実だった。アシッドな迷走感のあるHaruomi Hosonoの"Laugh-Gas”を聴かせてくれた時は、この奇妙で驚きの連続の11分間を是非全て聴かせてほしいと感じたが、そんな心配は無用だった。彼女は誰よりも、トラックそのものがDJをしてくれることをよく心得ている。 Powderは、これまで自分がNowadaysで見た中では最多数となる観客に向け、9時間以上もプレイしていた。テクノとディスコとの間につながりを追求しているのが彼女のまた素晴らしいところで、これは組み合わされることが多いハウスとディスコの場合に比べるとあまり一般的ではない。グルーヴィーなサイケデリックテクノからイタロに、そしてイタロからタイトなギターのループへとつなぎ、そしてまた繰り返す。自分も一体どのジャンルの音を聴いているのだろうかと混乱してしまった程で、己が文化に対して張り巡らしている探査用レーダーが通信妨害されてしまうような、新鮮な体験だった。 この夜の序盤、おそらく10人程度の人々しかフロアにいなかった頃、PowderはAcid Test(AKA Roman Flügel)の”Test 1”をプレイした。自動車が通り過ぎていく高解像度なサウンドエフェクトがトラックの上層部に乗せられたが、部屋の中央部にいた僕は、このエフェクトが素晴らしくパンニングする様子を聴くことができた。うなるような音が、あるスピーカーから天井の中央部にマウントされたツイーターを通過してもう一方へと抜けていき、まるで自動車が自分の頭のすぐ上を通り過ぎたように感じられた。ニューヨークの住民であれば、Nowadaysでついに実現した、こんな体験ができる程の正確なセッティングを楽しんでほしい。 Photo credit / Brandon Wilner
RA