Sónar Hong Kong 2018

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  • この前の土曜日、Sónarが香港のScience And Technology Parkにて第2回目のイベント開催を迎えた。会場は街の混み合った通りから離れた落ち着いたエリアにあり、そこから灰色の空の向こう側にはスカイスクレーパーを眺めることができる。ロケーションはとても良く、屋外と屋内に広大なエリアがあり、十分な空間の中でアート、音楽、テクノロジーを包括したアドベンチャラスなプログラムを楽しむことができた。レイアウトはバルセロナの本家イベントを再現し、ステージ名は同じ(SónarClub, SónarVillage, SónarDômeなど)。ラインナップは、実験的なアクトやLaurent GarnierやSquarepusherといったSónarお馴染みのベテラン勢に重点が置かれていた。    午前と昼のほとんどの時間はワークショップやアーティストのレクチャーにフォーカスされており、ロボット工学や、自作シンセ、様々なVR体験のできるクラスがあった。実際の参加者とカジュアルに観覧だけしている人の双方が集まり、人気を博していた。知らない人がヘッドセットをつけてサーフィンやパラシューティングをしているのを見て楽しんでいたが、いざ自分がやってみても楽しかった。
    そこからSónarDômeへ向かった。Hong Kong Community Radio、Seoul Community Radio、Fauve Radioが、ローカルのベストアクトと韓国の気鋭アーティストを紹介していた。天気も次第に良くなり、ステージ上ではスムースな出だしからクラブ寄りなサウンドへと徐々に移行し、素晴らしい空間ができていた。他の場所はというと、SónarVillageではフランス人アーティストのJacquesが、この日一番興味深いセットをプレイしていた。彼は日常にある物を使って楽器にし、ノイズを生み出してそれをサンプリングするパフォーマンスを披露。SónarClubでは、Tzusingがまるでオーディエンスが何を求めているかを感知したかのように、エクスペリメンタル、インダストリアル、テクノの点と点をなぞるようなプレイをしていた。終盤にはPlastikmanの"Spastik" をドロップし、フロアからはたくさんの笑みがこぼれていた。 太陽が急速に沈みかけた頃にSónarVillageへ戻ると、カナダ人トリオのKeys N Kratesが、ヒップヒップとエレクトロニカが融合したサウンドでクラウドのテンションをゆるくキープしていた。辺りが真っ暗になると、Mount Kimbieの素晴らしいショーが始まり、最後は”Made To Stray”のライブヴァージョンで締めくくった。Floating Pointsはソロライブセットで登場。このフェスティバルの、実験的な要素とクラブ要素の2面性の間の架け橋となるようなプレイを披露し、オーディエンスを夢中にさせていた。そこから、プログラムはよりダンス寄りな内容へと移行していった。多くのオーディエンスがThe Black Madonnaのフロアに集まっていたが、筆者はSquarepusherのオーディオビジュアルショーを選択。高速なドラムンベースやブロークンビーツ、スローなアンビエントまでを行き来するセットで、あるひとりのダンサーは靴下を脱ぎ、髪をグリッチーノイズに合わせて振り回していた。筆者にとってこのブッキングは、他の何よりも、その地域にある音楽的境界線に挑むというこのフェスティバルが持つ意志を鮮明に描き出していたように思う。Sónar Hong Kongは、この街の音楽シーンの活気をよく表したフェスティバルだった。地元と近隣地域の素晴らしいアクト達にプラットホームを与えつつ、"普通"を超えたところにあるものを目指している。 Photo credit / Kitmin Lee
RA