Eli Keszler in Tokyo

  • Share
  • 会場に着いたのは、ちょうどSugai Kenのライブが始まる前だった。入り口で居合わせたスタッフから、まもなく照明がかなり落ちて真っ暗になるから、今のうちに自分の定位置へ移動しておいた方がいいと聞かされていた。そのとおり一気に照明が落ち、ステージの卓上にある手元を灯すスポットライトのみでライブがスタート。日本舞踊や能の音楽のサンプル、見たことのない楽器のようなものを奏でた音、容器に入った水をストローでブクブクと吹いた音などを、機材を通して加工したり、ピッチを変えて歪めたりしながら展開させていくのだが、その節々にはどこかユーモアがある。また彼のライブには、聞かせるだけでなく見せることを意識したパフォーマンスが顕著に表れていて、ステージからいきなり姿を消したと思ったら、会場の脇にまわり、後方から蛇腹状の楽器のようなものを「ジャッ、ジャッ」と間をおいて鳴らしながら出てきて、フロアーを練り歩きながらステージに戻るというシーンがあったりもした。彼のシグネチャーとも言える日本の古典サウンドや、どんな音でも使ってパフォーマンスするというスタイルが印象に残るショーだった。 その後、正確にはいつのタイミングでジョインしたのか定かではなかったが、Sugaiのステージから垂直方向にあるブースにCompumaが登場し、ライブに参加。Sugaiのアンビエントに乗る、音数の少ない宇宙的なシンセの音や、ボイスが反復するだけの不気味で滑稽なトラックがCompumaの音だと特定できた。コラボレーションの時間はほんの15分ぐらいだったろうか。気が付いたらCompumaによる、ライブの延長線状にあるような実験的な選曲のDJに移行していた。ドローンや奇妙な電子音楽を織り交ぜたノン・ダンスのセットで、わずか30分のプレイはあっという間に終わってしまった。次のYPYは、昨年末に香川でプレイした時のレビューに描写があるとおり、2台のカセットMTRとDJミキサーを使った、DJ的なアプローチのライブを披露。スリリングな場面もあり、思わず音に反応して体がゆっくりと刻むように動いてしまう感覚を、この日初めて感じた瞬間だった。 会場内は、ステージとDJブースの前に椅子が用意してあり、座って聞く人が半数、その後方や左右に立っている人が半数という具合だった。ステージがSlyAngleのDJに代わると、ここでようやくライブ続きで固まっていた場の緊張感が緩み、ドリンクを買ったり、周りにいる人と話したりする賑やかな時間が生まれた。それから来日中のパーカッショニスト/ドラマーのEli Keszlerのパフォーマンスがスタート。時折PCをいじりながら、アンビエント調のかすかなトラックをバックに鳴らし、細かく繊細でタイトなドラムの音と、トリガーされた電子的な音が上手く融合していた。彼のリズムからは、生き物のような独特のうねりのようなものを感じるし、間の取り方が絶妙にかっこいい。その後は少しだけ彼とYPYのセッションが行われ、CompumaのDJが再び始まると、フロアーはまた賑やかなムードへと戻っていった。 Photo credit / Tsuyoshi Kamaike
RA