ind_fris Cassette Release Party “めいめつ”

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  • 現在は大阪を拠点とし、ネットレーベル・自主制作CDでのリリースやライブ活動を重ねてきた若き異才ind_frisがセルフレーベルScaffolder recordingsの始動とデビュー・カセット『Portfolio Vol.1』発表に伴い、リリースパーティーを東京・大阪にて開催した。東京での会場は幡ヶ谷のFolestlimit 。2010年のオープン以来、クラブミュージックから実験音楽、アート展示まで幅広いオルタナティブカルチャーの発信地として支持を得ているプレイスだ。 この日のパーティーは“めいめつ”という題のもと、ind_frisの友人達によるサポートのもと開催されていたようだ。オープンのMieuxxxから切り替わってDJを手がけたLe Perrieは、一瞬で雰囲気を切り替えるエクスペリメンタル系のトラックから、ノーウェイブ・ニューエイジまで包括した独自の世界観が垣間見えるセット。続くH.TAKAHASHIはiPadと超小型ミキサーを用いたライブセットで、シンプルな波形を用いた穏やかなアンビエントを演奏した。客の入りも早く、ライブからの転換で再びLe PerrieがDJを行う頃には平日ながらフロアが窮屈になるほど。この日への期待感を感じさせる光景だ。 熱気も高まる中、この日の主役ind_frisによるライブがスタート。Elektron OctatrackとAnalogfourによる100~110BPMのボトムの効いたグルーヴに乗せて、YamahaのヴィンテージキーボードDX100を奏でていく。時には演奏したフレーズをその場でループしてトラックを構築するなど、フィジカルと技巧を織り交ぜつつ、日常のサウンドトラックとも言えそうな懐かしみすら感じさせる構成で展開していく。4つ打ちからブレイクビーツ調のリズムへと移行しつつも一貫性を持っており、大袈裟かもしれないが中期Nightmares On WaxやBonoboのようなスタイルをよりローカライズしたような、ハウス・ダブ・チルアウト・イージーリスニングなど様々な音楽のエッセンスが感じられるセットであった。 締めくくりを担うのは老舗ネットレーベルsabacan recordsの一員guchonがDJを披露。流れを引き継ぐべく、テクノクラシックをCDJによって極端にテンポダウンしたスクリューセットで場内を沸かせていた。原曲のダークさやアシッドベースのうねりも増したトラックの応酬で、ライブとは一転してテクノらしいハマる展開をつくりあげていた。 ガレージや秘密基地を思わせるフロアは常に人の熱気を感じられ、ind_frisいわくバンド界隈からネットミュージック界隈まで、垣根を越えて多くの人が訪れていたとのこと。Forestlimitのフロアのちょうど良い規模感もあり、音楽を堪能するだけでなく、交流と盛り上がりが生まれている様子も伺えた。ジャンルが細分化され、本質がますます見失われていく中で、一つのスタイルの中にあらゆる音楽から抽出された要素を溶け込ませるようなind_frisの音楽は、今後クロスオーヴァーの一つの理想形を形作っていくような予感がする。その才覚の片鱗を感じさせるようなライブアクトが、異なるカラーを持つDJ・ライブによって絶妙にサポートされており、濃密ながらどこか爽やかな印象を残すパーティー体験であった。
RA