DJ Nobu and Wata Igarashi at Oval Space

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  • ディープテクノファンにとって、先週金曜日のOval Spaceのラインナップはオールスターキャストと言っていいほどだった。DJ Nobu、Wata Igarashiという2人の日本人セレクターが出演したほか、Northern Electronics主宰のAbdulla Rashimがレアなライブセットを披露。また、この日は同ヴェニューでのNobuの2017年のレジデンシー初日。筆者は3人のプレイが楽しみではあったが、Oval Spaceという場所に多少の不安があった。筆者個人の経験では、同ヴェニューはワールドクラスのラインナップをきちんとしたサウンドで迎え入れられていないことが多々あると感じていたからだ。 とは言うものの、Oval Spaceチームは今年に入ってからd&b社製のV-Seriesをインストールし、サウンドシステムをパワーアップすると明言していた。そして、早速その成果を実証してみせた。筆者が午前1時に到着すると、Igarashiがメロディーを抑え、シンコペーションされたトリッキーなリズムを中心にしたウォームアップセットを披露していた。張り詰めたアシッドラインや、トランシーなベースラインなど、彼がセットに詰め込んだ全てのディテールをクリアに聴き取ることができた。ある瞬間、ダビーなドラムがフェニックスのように上り詰める澄んだシンセモチーフにミックスされていったのが非常に印象的であった。彼が午前2時にプレイを終えると、ダンスフロアからは拍手の嵐が巻き起こった。ブース脇でWataのセットを聴いていたNobuは、歩を進め盟友と抱き合った。 全身に黒い服を纏い、ブロンドヘアを刈り上げたRashimは、厳しい顔つきで1時間のライブパフォーマンスを始める前の最後の準備をしていた。セットは青い照明の瞬く中、ぼんやりとしたアンビエンスと柔らかなサウンドでスタート。前半は擦り切れたメロディーを乗せながらパーカッションのレイヤーを徐々に重ね、じっくりと展開。サウンドシステムの欠陥に気が付いたのはこの時だった。ダンサー達はディープなグルーヴにどっぷりとハマっていたが、ヒプノシスを誘発するのにボリュームが十分ではなかった。筆者は周りクラウドたちの会話に終止気を取られてしまい、サウンドシステムを改良する必要があると実感した。 この時点で、Oval Spaceの大きなダンスフロアは半分ほどしか埋まっていなかったが、午前3時頃にヘッドライナーのNobuがプレイを始める頃にはより多くの人が集まってきた。この日絶好調だった彼は、レフトフィールドなテクノや心地よくも爆発的なクレッシェンドを織り交ぜながら、聴く者を催眠術にかけるようなグルーヴを生んでいた。それだけではなく、彼はシステムの特徴を既に把握したようで、ベースの重さの不足を補うべく複雑なパーカッションとプリズムのようなメロディーに集中していた。長時間踊り続けすっかり疲れた筆者は、この日本のマエストロはあらゆる尊敬に値するDJだと心の中で思った。 Photo credit / Enrico Policardo
RA