Space Dimension Controller in Tokyo

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  • その名の通りSFチックで宇宙的、そしてどこかノスタルジーすら感じさせるトラックメイクで瞬く間にシーンに名を定着させたSpace Dimension Controller。Jack Hamillのソロプロジェクトとして2009年に始動して以来、Royal OakやR&S Recordsからリリースを重ねるほか、昨年2016年には幻のデビュー作“Orange Melamine”をUKの老舗レーベルNinja Tuneからリリースしている。未だ独自的な立ち位置で活動を続ける彼の来日公演が、Circus Tokyoにて行われた。 メインフロアのトップバッターは関西から関東に拠点を移し、さらに意欲的な活動を続ける鬼才Okadada。オールドスクールでレイヴィーなハウスから、艶やかなヴォーカルもの、アシッドハウスまでパワフルな鳴りでまとめ上げていく。ダイナミックなミックスとエフェクト使いやブレイクなどを交えた流れは、場をつくる確かな経験則を感じさせる。ラストはSDCへの橋渡しとなるピュアなシンセフレーズのIDMで締めくくった。 Space Dimension Controllerはライブアクトで登場。透明度の高い音色によるエモーショナルなフレーズで幕を開け、緩やかな4つ打ちのリズムと、繊細でアブストラクトなシーケンスも相まって意識が飛ばされるよう。各音の隙間を活かした楽曲構成で、浮かび上がる穏やかなパッドやフレーズによって次の流れを生みだしていく。まさに彼のスタイルを象徴するような展開だ。ディレイによって深みを持たせた美麗なシンセサイザーサウンドは、水面できらめく光や星の瞬きを想起させるようで、中盤からはこれも彼らしいベンドの効いたブギーライクなフレーズも繰り出されていた。確かな質感を持ったボトムのグルーヴによりダンスミュージックとしての強度もあるが、一転して落ち着いたムードで、音によって想起される空間に浸るような体験であった。 トリを担うDJ Wildpartyは疾走感あるテックハウスやモダンな質感のディープハウスで、やや落ち着きぎみのフロアにその名に恥じない刺激を与える選曲。やや大振りながら快活なフレーズと展開によって、まだまだ踊り足りない様子のフロアをさらに刺激していく。Okadadaにも言えるが、派手さや展開の大きさに関わらず、DJ自らも含めてより楽しめる展開を追い求めるような姿は、確かな求心力を感じさせた。 DJ両名がフィジカルに使いこなしていたDJセットはPioneer DJのCDJ-2000NXSとDJM-900NXSの組み合わせ。フォーマットにとらわれない、新たな世代にとっては最適なセッティングだ。メインは互いのキャラクターの違いが補い合うような絶妙なブッキングで、各アクトが十分に力を発揮できるタイムテーブルだと思えた。フロアはカジュアルに楽しむ人々から、飛び跳ねるようにダンスする人、スピーカー側で音楽に没頭する人まで、終始各々が自由に楽しむ雰囲気で、音やムードの変化にも自然と追従しているようだった。 SDCの初期テクノやUKハウス、'80sディスコから抽出されたスペーシーなエッセンスが結晶化された、デビュー以来確立されたライブセットはもはや熟練の域に達している。しかし個人的に驚かされたOkadada、Wildpartyのセットは、ライブ前後の勢いをつくる真の意味でのサポートアクトの仕事であり、個として際立ったDJ力を感じ取ることができた。
RA