Mike Shannon presented by Artemis

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  • 表参道交差点に位置する多目的スペースWALL&WALLは、東京のクラバーにとって、Ventの名前のほうが馴染み深いだろう。平日はライブなどのイベント行うこのベニューは、週末になるとナイトクラブVentとして機能する。昨年9月にオープンしたばかりであるにも関わらず、妙妙たるアーティストのブッキングやプロモーターとの提携によって、現在東京のエレクトロニック・ミュージックシーンでは有数のクラブになりつつある。その運営ポリシーと店内のデザインからは、シンプルながらもデザイン性のある世界観を感じる。そしてなにより、良質な音質を提供してくれるフロアは音に集中できる最良の空間である。 セキュリティーを通って地下室への階段を下り、エントランスを抜けてロッカーに荷物を預ける。オーダーしたドリンクを飲みながら雰囲気の異なる大小二つのフロアの様子をうかがう、といった一連の流れに、筆者は毎回このクラブでの居心地の良さを感じる。メインフロアではArtemisレジデントの一人であるNehanがボトムの太い、肉厚なミニマルハウスでフロアの熱気を高めていた。ストレートさの中にもアクの強いグルーヴや変化球的なハウスを落とし込む選曲で、彼が最後にプレイしたPortableのミステリアスなヴォーカルトラックはまさにそのスタイルを象徴するようであった。1時を回った頃、早くもパーティーの盛況がうかがえた。 Mike Shannonの約3時間にわたるセットは、やや落ち着いた雰囲気のミニマルディープハウスからスタート。時折変化球アシッドサウンドを交えつつも、インテンスな甚だしい雰囲気は全く感じさせず、むしろリラックスした雰囲気がフロアに漂っていた。捻りのきいた、モダンでグルーヴィーなクリック~テックハウスを中心に、フロアを徐々にウォームアップ。硬さと軟らかさが混ざり合う選曲と、いくつかのブレイクを挟む展開からは、ストーリー性が感じられると同時に、オーディエンスの空気を読みつつ変化をもたらす配慮が感じられた。セットが終盤に差し掛かった頃、BPMを一気にダウンし、女の喘ぎ声がフロアに響きわたった。このLil Louisの"French Kiss"による演出は、オーディエンスの注目を集めることに見事成功。さらにその後はドラッギーな要素を交えつつも、深くは掘り下げない絶妙な選曲で、乾きと湿り気が調合された明るい雰囲気をつくり出した。このエンターテインメントは誰もが真似できるものではない。この頃Shannonの色がようやく見えてきた筆者にとって、欲を言えば、あと2、3時間程彼のプレイに浸っていたかったのが本音である。しかしながら、その後のShake Mとのバトンの受け渡しは非常にスムーズで、日本人気質を持った繊細さと、ベルリンのアフターパーティーを彷彿させるような、クリスプなディープハウスを中心とした選曲バランスによって、引き続き心地良く踊れたことは事実だ。 今回のパーティーArtemisは、2013年から不定期で行われており、過去にはVeraやSammy Dee、Jan Kruegerといったアーティストを招聘。グルーヴ感のあるディープハウスやミニマルサウンドといった共通点がありながらも、それぞれ独自のスタイルを持つNehan、P-Yan、Yasu、Shake Mの4/4テクノ愛好家4人をレジデントメンバーに構え、洗練されたエレクトロニックミュージックをフロアに送り出し、確実に日本のパーティーシーンを盛り上げている。ArtemisとVent両者の独自の世界観が絶妙に混ざり合った、心地の良い一体感が感じられた一夜。次のArtemisではどのようなドラマが繰り広げられるのだろうか。
RA