Dekmantel in Tokyo

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  • アムステルダムで生まれ、世界中のパーティーピープルに愛されているDekmantelは、近年のエレクトロニックミュージックのランドスケープを形成する重要な役割を果たしている。音楽愛好家がイベントを主催したりレコードをリリースするのはよくあることだが、Thomas MartojoとCasper Tielrooijの向上心に匹敵する者はそうそういない。このアムステルダム拠点のデュオは、自身のパーティーをヨーロッパで最も人気のあるフェスティバルのひとつへと成長させただけでなく、国境を越え、Dekmantelのサウンドを世界各地の街へと届けてきた。今年4月に東京で初開催されたDekmantelは、先日再び日本の首都を訪れ、Contactで2日間に渡るパーティーをホスト。Matias Aguayo、Peter Van Hoesen、Palms Trax、Randomer、そしてローカルアーティストたちをフィーチャーし、Dekmantelは2夜を通して、グルーヴィーさとシリアスさのバランスを上手く取っていた。 初日はまず、Dekmantelの同名レーベルからリリースするPalms Traxが、ディープかつパーカッシヴなトラックでメインフロアのStudio Xを温めた。Awesome Tapes From Africaの楽曲をMontego Bayの“Everything”のようなハウスヒットと織り交ぜながら、3時間に渡りプレイ。セットが終わりに近づくにつれ、顎を撫でたり腕を組むような客は目につかなくなり、最終的には全員がダンスしていた。 次に登場したのはMatias Aguayo。自身の声を重ねたりループさせるなどした、ヒプノティックなイントロでライブセットをスタート。その後、メロディックなチャントやヴォーカルパーカッションなどがサンプラーを介して合わさり、最終的にそれらアンビエントトラックの数々はひとつの4つ打ちグルーヴへと変化していった。セットの終盤、エンターテイナーである彼は、Sparrows名義でも知られる日本人アーティストRyota Miyakeによる、バブルガムJ-POPトラックをサプライズで披露。AguayoとMiyakeの2人によるラテンアメリカと日本のポップ・コラボレーションがもし実現したら、注目を浴びるだろう。 一方のContactフロアでは、日本のアップカミングなDJ/プロデューサーYoshinori Hayashiが、ダークでレフトフィールドなテクノをプレイしていた。メインフロアの歓声への対抗勢力となったHayashiのセットは、病的で、アトモスフェリックでありながらも、ダンサブルだった。世界各地から音のインスピレーションを見出す才能と同時に、バンギンなセットを披露してくれた。 テクノ、エクスペリメンタルにフォーカスを置いた2日目は、クリスマスイブということもあってか、前日よりも早くから多くのオーディエンスが詰めかけていた。主宰の2人から成るDekmantel Soundsystemがオープニングを務め、その後Peter Van Hoesenがステージに登場。本国でのDekmantel Festival以来に久々のライブセットがはじまると、フロアに多くのオーディエンスが流れ込んだところからも、日本におけるPeterの人気の高さを伺い知れた。今回彼が披露したのは、ミニマルなスタイルのテクノセット。リズムマシンの音を中心に据えつつも、前半はPeterらしい叙情的なパッド・サウンドを随所に取り入れながらグルーヴを構築していく。その後、一旦ブレイク的にテンションを落とした部分で、多少オーディエンスの集中力も途切れたようにも感じたが、その後はBPMを少し早めて、得意のアシッディな世界観もチラホラと見せつつも、ストロングなビートで攻め続け、フロアもヒートアップ。およそ一時間半のセットはあっという間に感じた。個人的には少し各パーツの展開が早くも感じたので、もう少し長時間のセットでそれぞれのトラックの世界観を味わいたいとも思った。 続いて登場したのはRandormer。気鋭プロデューサーによるDJセットは、出足の流れが秀逸だった。ブレイクビーツや4つ打ちのビートを混ぜ込んだ独特の選曲スタイルで、UKのベース出身者らしい多彩さが光る。ただ、その後はわりとアッパーなサウンドを求める傾向のあった当日のオーディエンスのバイブスに引っ張られてか、ハードなテクノへとスタイルをシフト。その後は延々とストロングなテクノをプレイ(最後はドラムンベースになったようだ)。個人的には平坦なミキシングで退屈さが否めなかったが、朝6時を過ぎても客の引かないStudio Xの盛況ぶりを見て、師走感ただよう12月末の東京のフロアにとって、彼の選択は正しかったのかもしれないなと感じた。このへんで今夜もお開きかと思い、まだ薄暗い渋谷の街を帰路へと着いたが、まだContactに残っていた友人から、Peterによるハウス/ディスコセットが始まったとのメールが...... 最後までフロアに残っていたオーディエンスはテクノ、エクスペリメンタルからハウス、ディスコまで、相当に楽しめた一夜になっただろう。 Photo credit: Yu Takahashi このレビューの執筆にはDaisuke Itoも参加しています。
RA