食品まつり a.k.a foodman and D.J.Fulltono in Seattle

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  • 外国人DJが一度は訪れるべき場所だという日本の評判はずいぶんと前から言われていることだが、近年、日本のエレクトロニックミュージックに対する世界の関心はますます高まっている。そのエキサイティングなローカルシーンの中でも特に海外から注目を集めているのが、ジュークとフットワーク。日本人アーティストが'00年代のシカゴで生まれた激しいビートに理解を深めていると言われても、ピンとこないかもしれない。しかし、このジャマイカン・ダンスホールの完ぺきなイミテーションを見てもわかるように、この島国は、世界で生まれたサウンドを独自の解釈で再構築するという能力を持っているのだ。 2011年から音楽活動を開始した横浜拠点のアーティスト、食品まつり a.k.a foodmanは、ジュークに限らず、ハウス、テクノ、アンビエント、時にはポップをも手がけている。彼は近年、オンライン上で高い称賛を浴びているだけでなく、UnsoundやデンマークのPhono Festivalなどにも出演。そして今月初めにはUSデビューを果たした。シアトルのこじんまりとしたヴェニューTimbre Roomで日曜日に行われたショウは、全8都市を回るツアーの2番目のギグであった。その前の週のポートランドでのイベント同様、この日彼は、大阪拠点のD.J.Fulltonoと揃ってラインナップされた。 まずはローカルアーティストのDJ NHK Guyが、スローなジャムからフットワークまでを織り交ぜた、目がくらむようなセットでフロアを温めた。D.J.Fulltonoを陰とするならば、体を揺さぶりニヤリと笑いながらDJする彼は陽だったと言える。Booty Tune主宰のFulltonoが登壇すると、緻密なドラムパターンを取り入れた、瞑想的でミニマルなジュークを披露。クラウドはその難解なサウンドに対し、どう動けばよいのか戸惑っている様子だったが、Fulltonoがゲットーテックに切り替えた瞬間は大きな盛り上がりを見せた。 その2時間後、Foodmanがブースに入った。MIDIコントローラーを使用したライブセットで、彼は身体から発せられそうな、押しつぶしたような音を軽快なドラムパターンの上で操った。一方で、上部にあったプロジェクターには、食べ物関連の奇妙な画像など、ヒプノティックなイメージが映し出されていた。シンプルな3音リフのモジュレーションは、彼の好むビデオゲームやアニメのサウンドトラックを彷彿とさせた。フットワーク/ジュークアーティストとして知られる彼だが、そのセットは、彼がDJ Rashadだけではなく、MatmosやMatthew Herbertなどとも多くの共通点を持つ、機知に富んだプロデューサーであることを証明していた。 クラウドは、彼の狂ったような曲がりくねりにのめり込んでいった。ある客は、グリッチの連続とハイピッチなノイズに刺激されこう叫んだ。「マジでクレイジーだ、狂ってる!」パフォーマンスの間で最も印象的だったのは、Foodmanが単一周波数に的をしぼった瞬間だった。その約60秒間、フロアにはクラウド達の叫び声が飛び交った。その絶え間なく続くドローンは、誰が最初に折れるか?というオーディエンス同士のチキンレースを生み出していた。ようやくトーンが変わり始め、クラウドはそのかすかな変化を糧とした。地下フロアでのノイズショウというと、皆が腕を組みながら立ち、精神を集中させながら首を縦に振っていることが多い。しかしTimbreでは、ウォームアップDJ陣がフロアに油を差す存在となり、クラウドはFoodmanのエクスペリメンタル・コラージュを自由奔放に歓迎していた。 最初のハイハットが鳴ったのはセット開始から20分程経った頃で、それはダンスミュージックとして認識できる短い流れの始まりの合図となった。ドリーミーでメロディック、ミッドテンポなその流れは、Moodymannに通じるものがあった。しかしクラブらしい雰囲気になることはなく、すぐにノイジーなフィードバックへと戻った。 これらの急激な変化に、我々の耳はなかなかついていけなかった。混乱しながらも踊ろうとする客もいたが、ほとんどがただただ困惑しているようであった。突然訪れたこの状況に皆はまごついていたが、最後までFoodmanは、大胆で悪ふざけた、洗練さよりも楽しさを追求したパフォーマンスを披露してくれた。 Photo credit / Jesse Rivera
RA