山頂瞑想茶屋 - 001

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  • Katsuya Sanoとのダンス・ミュージック・ユニットLohypeでも活躍するササマシンイチロウ。山頂瞑想茶屋はアンビエント・プロジェクトであり、彼にとってキャリア初となるフルアルバムでもある。『001』は全方位的なアンビエント/ダブ・アルバムであり、電子音をレイヤーした類のチルアウト系の作品ではない。ダークなシンセの音色を使ったアシッディなトラックから、逆回転サウンドを用いた実験的な手法、さらにはギターやピアノ、打楽器を用いたエキゾチックなサウンドまで、非常に多彩な音楽性を持っている。ダンス・ミュージック/非ダンス・ミュージック、電子音/非電子音に囚われない彼のサウンド・センスの良さは、プロデューサーとして、さらにはDJ(としては近年はご無沙汰だが)として長年、活動を続けてきた彼の音楽的語彙の豊かさに由来する。 もうひとつ、本作の魅力は独特の陶酔感にある。恐らくこれは彼が持つ“野外の感覚”による部分も大きい。というのも、山頂瞑想茶屋というプロジェクト名自体、2000年代前半の野外レイブにおけるライブ・アクトにちなんだ名前で、文字通り山の頂上にステージを組んだ自由奔放なアンビエント・セットからその活動をスタートさせている。その後もこの名前を用いて、Anoyo、99Flagsなどアンダーグラウンドな野外パーティを中心としたライブ・アクトとして活動を続け、ときにドラッギーで、ときに包み込むようなサウンドに変化する山頂瞑想茶屋の陶酔感は、単純にアシッディとか、サイケデリックという言葉には置き換えられない、もっとさまざまな感情が入り込んだ、広義的な意味での酩酊感がある。その野外レイブにおけるライブセットの感覚は『001』にも落とし込まれており、これも本作のオリジナリティにつながっているだろう。 今説明したように、もともとはサイケデリックやアンダーグラウンドなテクノ・シーンとのつながりが強いが、本作におけるサウンド・プロダクションは、まったく古くさく感じることもない。そのあたりはシンセのフレージングや音色の作り込みによる部分が大きいだろう。“Gramophonen”のシンセ・ワークは特筆すべきだし、エキスペリメンタルな“Cameroon”の先鋭的なアレンジも素晴らしい。それに対して、インタールード的に展開されるトラックでは、生楽器を用いてアーシーな質感を演出。このコントラストが本作にさらに深みを持たせている。ミックスに関しても、広がり過ぎずに聴きやすいバランスにまとめられているのも印象的だ。 『001』で特筆すべきはやはり、アンビエント/ダブにおける、音楽的な表現方法の豊かさだ。音色のセレクトから、エディットの仕方、シンセの重ね方などに一癖をつけることで、オリジナリティのあるサウンドを構築している。ここまで多彩な表情を持ったアンビエント・アルバムはそうそうない。
  • Tracklist
      01. Rev.3 02. Cameroon 03. Sdesen 04. Flamingo Lake 05. A Different Exit 06. Gramophonen 07. Ohana Song 08. Into Asteroids 09. M Bubble 10. Kuzuhara Fields 11. Serge 12. Bell & Me 13. Toy Piano 14. Shu
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