Marc Philipp & Nils Weimann - Mupasario

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  • 「Mupasario」はMarc PhilippとNils Weimannがこれまでに発表してきたコラボレーション作品と同じく、派手なものとは言えない。"ミニマルハウス"のような一時代前の言葉に無理やり関連付けられるアーティストたちと同様、本作の堂々とした抑制ぶりも二通りの解釈が可能だ。つまり、ある人にとって完ぺきに構成されたキラートラックでも、別の人にとっては恐ろしくつまらないものかもしれない、ということだ。しかし、主観的な好みや一般的な定義を超越したところに「Mupasario」の心地よさはある。その大きな理由はベースラインにあり、表題曲や"Yabda"のベースラインは確かな仕上がりだ。トラックのペース構成も同様によく考えられており、パーティーの勢いをコントロールしようとする意識が表れている。 "Mupasario"は密かなスウィングと極めてシンプルなベースラインによる軽快なトラックで、ひとつひとつの音がしっかりと打ち出されている。しかし重要な要素は、キックドラムとハイハットのパターンが生み出すシンコペーションによるコントラストや、スネアを模した数種のエフェクト、ところどころで用いられている繊細なハーモニック要素といった細部にある。長めのイントロ部には浮遊感がある分、陰鬱を露わにしたパッドが途中で入ってくる展開には驚かされる。"Yabda"にも同様のことがあてはまる。ベースラインがうごめきながら着々と迫りくる中、ブロークンビーツのキックと軽快なドラムフィルが打ち込まれるが、まるでPhil Collinsのシングルの音を使っているかのような意外なサウンドだ。"Philippu & Nilesh"はまどろむ午後に最適のサウンドトラックだ。先の2曲を考えたとき、こうした短いダウンテンポを無理やりな印象にならないように本作へ含めるのは難しいそうに思えるのだが、魅力が損なわれることなく上手く収録されている。
  • Tracklist
      A1 Mupasario B1 Yabda B2 Philippu & Nilesh
RA