- Machine Love(英語サイト)の特集記事に掲載されなかったが、A Made Up Sound、そして、2562として知られるオランダ人アーティストDave Huismansが語ってくれた面白い話がある。Huismansが最初のレコードをリリースする前、彼の友人たちは"ビートバトル"のようなものを行っており、昔のファンクをリミックスして競い合っていたそうだ。Huismansのリミックスでは元ネタが認識不可能になっていたため、審査員は彼のトラックを除外することにしたという。それについて彼は次のように語っている。「そのときに気づいたんだ。僕は物事を複雑にしているのかもしれないってね。でも僕はそれでもよかった。単純に一から何かを作るのが楽しかったんだ。サウンドを探して、それを自分の思うように変化させる。その音がどんなキャラクターなのか、その音を変化させたらどうなるのかを判断しながらね」
この発言は間違いなく『A Made Up Sound』に当てはまる。このコンピレーションはA Made Up Sound名義で同名のレーベルからこれまでに発表されてきた作品を収めたものであり、レーベルにとって最後の作品となる。2009年から2016年までにリリースされた収録曲は金属彫刻であるかのように、そのサウンドは激しい熱と圧力で捻じ曲げるようにして成形されている。ハウス、テクノ、ポスト・ダブステップといった音楽スタイルも同様に融解し、ひとつの塊となって新たな何かへと変化している。特定のシーンにとらわれることなく活動してきたHuismansは常にどこかアウトサイダー的存在であり続けてきた。そして、そのことが彼の唯一無二のサウンドを形作ったのだろう。
収録曲は7年間にわたってリリースされたトラックであるにもかかわらず、今回のコンピレーションのまとまりは驚異的な素晴らしさだ。その理由の一部は、金属的な音使い、ざっくりとした不規則なリズム、そして、非常に有機的なリバーブといった特徴的なサウンドにある。しかし、どのトラックにも通底するそうした要素の向こう側にあるのは、流動的で予測不可能な音楽であり、トラックはそれぞれかなり異なる内容となっている。"Sun Touch"や"Peace Offering"といったじわじわとしたグルーヴのものから、"Syrinx"や"Endgame"などのキラートラック、"P.P.B."や"After Hours"のような非標準的なビートを模索したものまで、様々な楽曲が収録されている。中にはこの3つすべてに当てはまるものもある。"Half Hour Jam On A Borrowed Synth"はリズムが刻まれていないにも関わらず、本作で最もレイヴィーな1曲かもしれない。"Ahead"のサイバーなディーバの叫び声はピークタイムを思わせるが、狂ったようなリズムは一歩間違えばオーディエンスを悪酔いさせそうだ。"Havoc"、"Stumbler"、そして、"Alarm"は、そのトラックタイトルに相応しく、意識をかき乱し、甲高く耳につく音なのだが、三者三様のたまらないグルーヴを聞かせてくれる。こうした非常にいびつなトラックでさえミックスでは上手くハマるものが多い。
『A Made Up Sound』は個性の際立つクラブトラックをまとめたものであるだけではなく、Huismansの類い稀な才能を見事に示すものだ。謙虚で温厚な性格のHuismansだが、音楽の質においても、そして、量においても、彼はアーティストたちが敬意を示す存在だ(英語サイト)。ここに収められた20曲のトラックはレーベルA Made Up Soundから発表されたハイライトのみであることを忘れてはならない。つまり、彼には他にも2562名義によるアルバムとEPが残っているのだ。これほど膨大な作品にこれほど多くの良作が含まれていることはまさしく非凡としかいいようがない。ビートバトルをしていたときのHuismansは、自分の音楽がクラブでかかることを考えてもみなかったという。そんな彼はいまや指折りのクラブミュージック・プロデューサーとなっている。
TracklistDisc One:
01. Take The Plunge (First Thought)
02. Bygones
03. Sun Touch
04. Crisis
05. Havoc
06. Syrinx
07. Untitled (Original Shortcut)
08. Extra Time
09. Half Hour Jam On A Borrowed Synth
10. Ahead
Disc Two:
01. Stumbler
02. Alarm (Edit)
03. Take The Plunge (Beat Mix)
04. Rework
05. Endgame
06. P.P.B.
07. Demons (Reprise)
08. After Hours
09. What Preset (Edit)
10. Peace Offering