Shinichi Atobe - Rebuild Mix 1.2.3.

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  • 「Rebuild Mix 1.2.3.」が生まれた理由は少し変わっている。本作に収録されているのは、Daniel JacquesのEP「Discovery Change (Part 4)」」からインスパイアされたオリジナルトラックだが、JacquesがShinichi Atobeに依頼したのはリミックスだったそうで(同EPに収録されたトラックのリミックスと思われる)、Atobeから送られてきた新曲3曲がJacquesのレーベルJadac Recordingsからリリースされることになったというわけだ。実際のところ、Atobeのサウンドからリミックス依頼の件を思わせる要素はほとんど感じられない。JacquesのEPはヒップホップにインスパイアされたハウス作品だったが、それにしては上品でスムーズ過ぎる場面があった。「Rebuild Mix 1.2.3.」で唯一「Discovery Change (Part 4)」の要素が使われているのが"Mix 3"で、ピアノが激しく弾かれるBPM85のループは、レコード針に盤の溝の埃が溜まったときのようなサウンドだ。とはいえ、他人のサウンドを使っているときでもAtobeの音楽は紛れもなく彼のサウンドだ。 メロディをきらめかせる場面では、酩酊を誘発するヒスノイズが切れのある高音に組み合わされている。"Mix1"では独特のアクセントでリズムが刻まれており、古びたヒンジとラチェットの軋みを足して割ったような音にハープが加えられる。ふたつの音程からなるこのハープがダブテクノでは珍しい響きを聞かせてくれる。ダブテクノの名作では澱んだ底無しの低音がよく使われるが、こちらのトラックは高域部分を強調していて面白い。"Mix 2"は標準をかなり下回る簡素で短めの美しいビートトラックとなっており、Atobeらしさが表れた1曲だ(収録曲を合計しても10分に満たない)。もし「Rebuild 1.2.3.」を簡潔すぎると感じるなら、それはおそらくもっと聞きたいという気持ちにさせられているからだろう。
  • Tracklist
      A1 Mix 1 B1 Mix 2 B2 Mix 3
RA