Amsterdam Dance Event 2016: Five key performances

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  • RAのWill Lynchが2010年に言及したように、毎年10月、アムステルダムの街はダンスミュージックの世界における中心地となる。同じ週末にポーランドで開催されるフェスティバルUnsoundの台頭によって、レフトフィールドなエレクトロニックミュージックのファンにとっては素晴らしい選択肢がもう1つ増えたが、Amsterdam Dance EventことADEが引き続き重要な存在であることは議論の余地もない。五夜に渡り、この街の100以上ものクラブでワールドクラスのセレクターたちのパフォーマンスを体験することができる一方、参加者が多いデイタイムのパネルでは、持続可能性、モジュラーシンセ、そして企業ブランディングといったトピックについて話し合われる。 今年のADEには、総勢2,000組以上ものアーティストがラインナップ。そのレンジは幅広く、Armin Van BuurenやTiëstoをはじめとするトランス〜EDMのスーパースターから、Maceo Plex(彼はアムステルダム国立美術館で2,000人を前にプレイした)、Dixon、Richie Hawtinら、ハウス/テクノにおけるあらゆる重要アクトまでが出演した。誰が参加してもほぼ皆が楽しめる内容となっており、そのシンプルさこそが同イベントの成功の理由なのかもしれない。BRET(輸送コンテナを活用して建てられた多層スペース)のようなDIYヴェニューや、RADION、De Schoolなどの大型クラブでは、世界のどの街のどのクラブとも張り合うことができるようなプログラムの数々が繰り広げられる。 それでは、今年のADEのキーとなった5つのパフォーマンスを紹介しよう。
    Vera Veraは非常に安定感のあるDJだ。そんな彼女のセットを木曜夜に聴き、筆者は最高な形でADEウィークエンドをスタートすることができた。20年間に渡り活動を続ける、クール、穏やか、そして冷静なセレクターである彼女は、技術的才能があるうえ、ペーシングとフローに対する鋭い耳を持つ。今回のADEで、VBXとLoud-ContactというプロモーターがBRETで開いたパーティーに出演したVeraは(この日はTreatmentとFrancesco Del Gardaもラインナップされていた)、エレクトロ色の強いテクノをミックスしながら、時折更にルーピーなトラックを挟むなど、彼女らしい力強いプレイを披露した。ほぼ全てのトラックがラウドで複雑なベースラインを持ち、それが彼女のミックスのスムーズさをより一層引き立てていた。タイミングの良いミックスと絶妙な選曲によって、Veraはフロアのエナジーレベルとムードを完全にコントロールしていたようだ。彼女は熱量を少しずつ上げたり下げたりしていたが、あれほど多様なトラックをプレイしながらそれを成すのはなかなか困難だ。しかしVeraの手にかかると、他のDJたちにとってはウォームアップ用のレコードになるような繊細なトラックもボムと化す。それが、彼女が素晴らしいDJだという動かぬ証拠だ。
    DVS1 完全にシラフの状態でクラブに行くのに、混み合ったアフターアワーズは完ぺきなシチュエーションかもしれない。遅い時間になると酔っ払った客はほとんどおらず、まだ残っている人たちはおそらく音楽が目的なはずだ。DJがそうしたシチュエーションに合わせたセットをプレイしてくれる時は、尚更最高である。土曜の午後にRADIONで行われたBreakfast Clubのパーティーでは、そのDJがDVS1だった。意外にもファンキーな面を持つこのシリアスなテクノDJは、そんな我々の期待にバッチリ答えてくれた。彼はハウス、テクノ、そしてエレクトロの間を跳び回りながらも、大部分をセンチメンタルなメロディーやトリッピーな雰囲気のある曲で展開。また、メロディックなベースライン(Terrence Dixon "Return Of The Speaker People"のKausto's Sudden Aphasia Mix)や、ムーディーでパーカッシブなバンガー(Aaron Carl "Crucified"のXDBエディット)も多かった。Breakfast Clubは、アムステルダムで最も人気のあるパーティーのうちの1つであり、彼らが毎年開催する2部構成のADEスペシャルは、この週末の中で最も混み合うイベントの1つだ。今回のようなDVS1のセットを体験すれば、あなたも納得するに違いない。
    Slow Life パーティーの中で1番面白い音楽がかかるのは最初と最後の時間だ、という人がいる。Nicolas LutzのようなDJが真ん中のスロットを務める時は(今回の場合は、土曜日にBRETで行われたSlow Lifeのショウケースでのことだった)、大抵そうしたセオリーを覆すのだが、彼がハウスミュージックの最も陽気なクルーに挟まれた場合は例外だ。Cecilio(修道僧のような気質のスペイン人)、DJ Tree(Adam Sandlerをくせ毛にしたような、グループで最もタフな音をプレイする人物)、 そしてLaurine(カントリーミュージックとガバのレコードのビートをマッチさせてしまうほど鋭いミキシングスキルを持った、エネルギッシュなイタリア人)の3人からなるDJトリオ、Slow Lifeは、この週末絶好のコンディションだった。お得意のパッドを多用したハウスや風変わりなテクノで展開し、ドラムにフォーカスしながらもそれ以上の要素がぎっしりと詰め込まれた曲が大部分であった。Slow Lifeによる3時間のウォームアップセットの中でかかったDJ Skullの"Bring It Home"のようなスペーシーなチューンが、ボム満載の一夜の土台を作っていたように思う。数時間後、グループがパーティーを締めくくる為に再登壇した時、彼らは完全に息が合っていた。
    Beautiful Swimmers 日曜朝の午前5時を6分回った時、The Love Symphony Orchestraの"Let Me Be Your Fantasy"がRADIONのRoom 2のスピーカーから鳴り響くのに合わせ、Max DことAndrew Field-Pickeringはクラウドに向けてビールのグラスを掲げた。それに応えたクラウドは、歓声を上げ、口笛を鳴らした。この一連の動きが、Field-Pickeringと彼のBeautiful SwimmersのパートナーであるAri Goldmanによる、完ぺきな3時間のセッションの終了の合図となった。ワシントンD.C.拠点のデュオはこの日、AardvarckやOutkast、Mark Sevenの新曲"The Fatal Flaw in Disco"などを矢継ぎ早にミックスし、彼らならではのパーティーロッキングなセットを披露した。自身達の音を深く掘り下げる彼らだが、Oliver Cheatham "Get Down Saturday Night"のような1ドルコーナー・クラシックも平気でプレイしてしまう。それこそが、Beautiful Swimmersが広い層から支持される理由なのだろう。
    Âme ADEでは知的なトークプログラムやパネルが数多く行われるが、一日の終わりにほとんどの人が求めるのは、楽しい時間を過ごすことだ。De Schoolでの土曜日から月曜日までのノンストップセッションに出演したビッグネームのうちの1人であるÂmeのKristian Beyerは、人々の足がどうすれば動くのかを熟知しているDJだ。午前11時にプレイをスタートした彼は、我々の予想通りメロディーとブレークダウンを多用し、筆者がこの数日間で聴いたどのアクトよりも万人受けのするアプローチを取った。時折、BeyerのビッグルームサウンドはDe Schoolの真っ暗なフロアやシリアスなクラウドとマッチしていないように思える瞬間があったものの、強烈なDJセット満載だったADEを締めくくるには、楽しくゆったりとした時間となった。 Photo credits / Lead - coohn.nl Slow Life - Het Rijk Alleen Beautiful Swimmers - Isolde Woudstra この記事の執筆にはAaron Coultateも参加しています
RA