The Pool - Dance It Down / Jamaica Running

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  • 「レーベルとして初めてダンスミュージックの12インチを5枚同時にリリースしました」と数週間前にInstagram(英語サイト)に書き込んだのはDark Entriesを手掛けるJosh Cheonだ。この投稿以前にも、サンフランシスコ拠点の同レーベルには乱発リリースをしているのではないかと思わせられることがあった。この5枚の12インチ以降、レーベルはさらに4枚の12インチをアナウンスしており、これで今年に発表されたのはアルバムとEPを合わせて34枚にのぼる(ここには11月と12月にリリースされるものは含めていない)。筆者はこの手のくぐもったシンセによるジャムセッションが人並みに、いや、人並み以上に好きだが、これほど大量のリリースはその音楽の価値を損ねたりはしないのだろうか? Dark Entriesのファンでさえ一部のリリースを聞かないままにしてしまうだろう。 同時リリースされた12インチ5枚のうち1枚を手掛けたのがThe PoolことPatrick Keelだ。テキサスオースティン発の同ワンマンバンドは80年代前半にレコードをリリースしていた。「Dance It Down / Jamaica Running」は価値ある再発盤といって間違いない。"Dance It Down"は鮮烈で軽快なニューウェーブだ。今回はKeelによるラップ風ボーカルが入っているバージョンとそうでないバージョンが収録されている。"Jamaica Resting"と若干テンポを速めた"Jamaica Running"ではウッディなパーカッション満載の気だるいグルーヴを聞くことができる。もしこのトラックに聞き覚えのある人がいるなら、それは、LCD Soundsystemが『This Is Happening』の"Dance Yrself Clean"で同トラックをかなりざっくりと"参考"にしていたからだ。 さらに"Dance It Down"と"Jamaica Running"の貴重な"European Remix"バージョンも収録されているが、本作の足を引っ張る結果になっている。このような素晴らしいトラックであっても3回連続で聞くとさすがに飽きてくる。Dark Entriesはレーベルとして見事に運営されており、素晴らしく徹底されている(今回の再発にあたってリマスターが施され、盤には新たなアートワークと12ページに及ぶブックレットとプレスクリップが付随している)。しかし、もっと簡潔にすることもできたのではないだろうか。
  • Tracklist
      A1 Dance It Down A2 Dance In Dub A3 Dance It Down (European Remix) B1 Jamaica Running B2 Jamaica Resting B3 Jamaica Running (European Remix)
RA