Takuya Matsumoto - Sweetrainsuite

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  • ディープハウスの傑作「Drafting Under The Stars」から1年が過ぎた2011年、Takuya Matsumotoはすべての機材を投げ捨て音楽の制作を止めてしまった。後に彼はStamp The Waxに対し「失恋して絶望」していたとその理由を説明している(英語サイト)。そんな中、「Drafting Under The Stars」は密かなヒット作となっていた。Bサイドに収録された"Jump Rope Music"は、Move DやFloating PointsといったDJのフェイバリット・トラックに挙げられている(個人的には表題曲がアツい)。知名度が高まっていく流れに合わせてMatsumotoは復活を果たし、Meda FuryClone Royal Oakといったレーベルから作品をリリースするなど、かつてない量の音楽を制作するようになった。彼の作品は確かに素晴らしかったが、「Drafting Under The Stars」に匹敵するものは出てこなかった。しかし、今回の「Sweetrainsuite」は違う。 新潟拠点のレーベルIeroから発表となる「Sweetrainsuite」は翻るメロディやグリッチ―なボーカル、そして、Matsumotoお得意の流れ込むようなシンセの詰まった恍惚の1枚だ。"Storm"、"Yellow Umbrella"、"Rainy Day Drive"のいずれにおいても太陽のぎらつく雰囲気が漂っている。個人的には、つんのめるリズムが刻まれる、どこかほろ苦いムードの"Rainy Day Drive"が本作のベストトラックだ。"Red Radio"では同様の素材が伸びやかなアレンジで使われており、BPM114の涼しげなペースで悠々とトラックが展開する。「Sweetrainsuite」に対して若干やり過ぎな印象を抱く人がいるかもしれない。惜しげもなく陽気で、かわいらしさが偏重されているからだ。しかし、それは同時に偽りのない気持ちで表現されているようにも感じられる。本作は単なるクラブのレコードにとどまらない、リスナーの心に残るエモーショナルな音楽なのだ。
  • Tracklist
      A1 Storm A2 Rainy Day Drive B1 Red Radio B2 Yellow Ambrella
RA