Quenum - Solitaire

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  • Philippe Quenumによる本作にはとにかく驚かされる。まず驚かされるのは、彼がCadenzaに作品を提供し始めてから13年が経っているということだ。2003年、彼はレーベル主宰者のLucianoと共に"Orange Mistake"(英語サイト)を制作した。現在、同トラックはミニマルハウス史を代表するトラックとされている。ここ数年のCadenzaは躍動するテックハウスをプッシュしていただけに、今回のような王道的なミニマルがリリースされたことにも驚かされる。というのも、同レーベルの初期作品のファンだった人はそうした音楽をとっくに聞かなくなっているだろうからだ。しかし、何より驚かされるのは「Soliraire」の素晴らしさだ。 今回のQuenumの音選びにも驚かされた。ドラム&ベースやハードコアに触発されたようなシンセなど、所々で荒々しさがある。そうしたシンセが使われると、DJによってはやり過ぎに感じられるかもしれないが、"Mystic"はそうした怪訝な人にも受け入れられるはずだ。このトラックでは、Cadenzaの初期作品を特徴づけたくぐもったビートや、緊張感を増していくベースライン、そして、ドラッギーな空間に重々しく降りかかるロボットボイスが使われている。ブレイク部は簡潔ながら素晴らしく処理されており、ゆがめたシンセフレーズがよろめきながら進行した後、鮮烈なハイハットと共に再びビートが鳴り始める。それによりダンスフロアを最大限に盛り上げるパワーが生まれている。 "Solitaire"も同様のパーツから構築されているが、こちらは荒々しさに拍車がかかっている。Quenumはクセになるドラムループを組み上げ、そこへLFOを施した巨大なサウンドを吹き付けたり、ゆがめた付随音やヴォーカルフレーズを時折鳴らしたりしている。気ままに奏でられるオルガンや切れのいいビートが使われた"Mystery"は"Orange Mistake"と近い関係にある。ダーティーでワイルドなアレンジが少しずつ施されていき、Argy "Love Dose"のLucianoによるリミックス(こちらもLucianoによるクラシックトラックだ)と同じ作法でパーカッションが組み上げられている。本作の収録曲を適切なダンスフロアで聞いた人たちも驚きの表情を浮かべるに違いない。
  • Tracklist
      A1 Solitaire B1 Mystery B2 Mystic
RA