Baleine 3000 - The Nap

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  • Lawrence Le DouxがVlekに提供した2枚のEPでは(共に英語サイト)、気だるいハウスミュージックが徹底的に探求されていた。しかし、ブリュッセルのプロデューサーである彼が自身のキャリアを通じて制作してきたのはそれだけではない。同レーベルから発表された最新作では、彼が以前に展開していた奇怪なプロジェクトが復活を遂げている。Baleine 3000はLawrence Le DauxことLaurent Baudouxと、フランスのAfrojaws、そして、先日、Mister Saturday Nightから奇抜なディスコEPをJun Kamoda名義でリリースした日本人MC・Illremeによる3人組バンドだ。Baleine 3000は2009年にもSonigからEPを発表している。何が飛び出すか分からない気まぐれなヒップホップは当時ですら浮いた印象だったに違いない。何より、「The Nap」にはAnticon所属のスーパーグループcLOUDDEADを彷彿とさせる場面がある。しかし、本作は2016年に耳にするサウンドとして異質であると同時に極めて心地よくもある。そして、Vlekのけば立った音楽性にどことなく通ずるものでもある。 7曲を収めた今回のEPはBaleine 3000の持つスタイルを網羅するような形になっている。最初の3曲はまるで、青春時代の素晴らしい夏休みに助手席へ置き忘れて溶けてしまったミックステープを聞いているかのようだ。泡立つような音を立てるギターループや、つんのめるビートが鳴らされる中、差し込まれるKamodaのあどけない声が無邪気に軽々と日本語と英語の間を、そして、歌とラップの間を行き交っている。"The Nap"はやり過ぎな印象を与えそうだが、手短に済ませることで楽しく思える雰囲気を保っている。"Fried Oyster"で使われている悲痛なブルース・ロックのサンプルは、昔の大きなカセットデッキの録音ボタン上に指を構えてやきもきしながらつなぎ合わせたかのようなサウンドだ。 本作の後半はアンビエントに向かっている。"Europ"はラウンジ的シンセポップとなっており、一方のさえずるようなコードをサンプリングした"Bird Call"は、BaudouxのEP「Terrestre」に収録されていた"Terre"の親戚関係にあたるトラックだ。簡素なアレンジの"Neon"では、ループさせた声とまばらなコードがHiroshi Yoshimuraによる鮮やかなシンセの名作を彷彿とさせる。そして、タブラが軽く叩かれる"Heroica (Ambiant Mix)"へ至ると、ゆりかごのような優しい揺らぎによって眠りへと誘われる。
  • Tracklist
      A1 Gonna Rain A2 The Nap A3 Fried Oyster A4 Europ A5 Bird Call A6 Neon B1 Heroica (Ambiant Mix)
RA