Pearson Sound - XLB

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  • 賛否両論を呼ぶ問題作となったファーストアルバムを経て、Pearson Sound名義でDavid Kennedyが制作する音楽は基本に立ち返っているようだ。2015年を締めくくった「Thaw Cycle」では、ロンドン拠点の彼特有のいびつなリズムと制作センスはそのままに、彼が近年発表してきた中でも特に明快なトラック2曲が収録された。同作が、バンギンなクラブトラックを求めているオーディエンスの乾きを潤すグラス1杯の水だったとするなら、今回の「XLB」はジョッキ1杯のClub-Mate(飲料の名前)だと言えるだろう。はつらつとして活気に満ちた大満足のトラック2曲を通じてKennedyがアプローチしているのは、改めてダンスフロアを楽しもうとしている姿勢のうかがえる、低域を強調したハウス/テクノだ。 "XLB"でそれを実現しているのは、方向感覚を麻痺させる要素と抗いようのないグルーヴによって作り上げられた豊潤なコントラストだ。クラップやハイハットが程よいテンポを保つ中、水中を思わせるシンセの音色がとどろくキック上に心地よく流れ込んでくる。アレンジはニクいほどシンプルだが(Kennedyは自在にパーツを抜き差ししながら造作もなくこの手のアレンジをやってのける)、そこは何かすごいことが起こりそうな雰囲気に満ちている。2分が経過して徐々にビートが消え去り、滝のようなシンセがうねり始めると、サイケデリックに沸き立つように緊張感が高まっていく。そうして挿入されるのがベースラインだ。今年、これよりも強力なブレイクのトラックはまず出てこないだろう。 それほど劇的ではないながらも、"Tsunan Sun"もいい仕事をしている。ダイナミックなシンコペーションで満載の同トラックは、高エネルギーの鮮明なシンセラインを前面に打ち出したパワー全開の1曲だ。中盤に入り、きらめく景色にさしかかる瞬間が衝撃的だ。"Tsunan Sun"にひとつだけ注意点があるとするなら、5分のトラックが終わるころにはメインのメロディの勢いが失われていることだ。それさえ注意すれば、本作はここ最近のPearson Soundによるベスト作品となるだろう。
  • Tracklist
      A XLB B Tsunan Sun
RA