One Last Dance (Tunnel) in London

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  • ここ最近、筆者がロンドンで1番よく耳にする不平不満は、ヴェニューが不足しているということではなく、皆が心から愛するヴェニューがないということだ。今月初めに閉店したDance Tunnelは、こうした不満の気持ちを完全に解消したわけではなかったが、この街の他の多くのヴェニューよりも、ずっと解決に近づいていたように思う。Dance Tunnelの魅力の影にはいくつかの要因があり、中でも筆者がとりわけ気に入っていのは、そのシンプルさだ。Dance Tunnelは、素晴らしいサウンドシステムを備えた、小さな長方形のベースメントである。また、このサイズはパーティーを始めるのにもちょうどいいサイズだ。例えば木曜日のレギュラーパーティーであったFWD>>は、フロアが半分しか埋まっていないということも時折あったが、低い天井と暗めの照明のおかげで、そうした状況でもクラウドは音にのめり込むことができた。 同クラブの常に素晴らしいブッキングも魅力のひとつだった。Dance Tunnelは、どちらかというと無名なDJたちをメインアクト的なステータスまで持ち上げることに長けている。また、多くの人にとって同店はハウスのクラブとして記憶に残るだろうが、テクノやベースミュージック、ディスコのアーティストをラインナップすることも少なくはなかった。そしてあの最高のロケーション。ダルストンのキングスランド・ハイストリートという、東ロンドンでも最も人気のパーティースポットに位置したDance Tunnelだが、結果としてそれが閉店の原因となってしまった。クラブ側は閉店の発表の際に、「残念ながら、ハックニーのライセンス情勢によって、Dance Tunnelを長期的に存続させる為に十分な時間を得ることができなくなってしまいました」とコメントしている。 「8時からずっとあんな状態だよ」。日曜の夜、Dance Tunnelの入場待ちの長蛇の列ができたキングスランド・ハイストリートの反対側で、Big Issueを販売していた男性がジェスチャー混じりで話してくれた。閉店当日、Dance Tunnelは早い時間に営業を開始し、入場料は取らず、彼らの友人やファミリーたちをDJとして招いた。筆者が午後10時に到着した頃には既に、客が1人外に出たら次の客を1人入れる、という状態だった。地下の扉を開けると、まるでBerghainの階段を上りきった時のような熱気と雰囲気が、顔面にドッと押し寄せた。フロアは異常なほど暑かったが、良い具合に乱雑な、週末の終わりの雰囲気が漂っていた。 この日は個々のDJパフォーマンスについて論ずるべき夜ではなかったが、最後の3セットをプレイしたのがThunder主催のMiles Simpson、TiefのMatt Hesselworth、そしてDance TunnelのオーナーであるDan Beaumontだったことだけはお伝えしたい。パーティーは予想通り、アンセムのオンパレードだった。Princeの曲("Erotic City"、"1999"、そして"Controversy"もかかっていたように思う)をはじめ、"Sing It Back"のHerbertリミックス、Pete Hellerの"Big Love"、Taylor Dayneの"Tell It To My Heart"。そしてKiNKの新曲"Valentine's Groove"も素晴らしかった。Dan Beaumontは、最後の時間こそ少し控えめなハウスをプレイし始めたものの、その前には'"Love Thang"のGenius Of Timeエディット、Kerri Chandlerの"Bar A Thym"、Josh One "Contemplation"(もちろんKing Brittリミックスだ)、Andrés "New For U"、New Order "Bizarre Love Triangle"、そしてWomack & Womack "Teardrops"などなど、数々のバンガーでクラウドを踊らせた。 午前2時が近づくにつれ、人々はブースの方へ近づいていった。パーティーはどんな終わりを迎えるのだろうか? 皆そんな気持ちだったのだろう。Beaumontはビッグチューンを連発、エアコンの風が当たらない場所にいたクラウドはもはや汗だくだった。その中で、彼はElectronicの"Getting Away With It"を投下—"I'm an original sinner, but when I'm with you I couldn't care less(生まれながらに罪人だが、あなたといる時は少しも気にならない)"という、Neil Tennantの歌声が響いた。 "Love Me Tonight"の中で、Fern Kinneyはこう歌っている。"I miss you so much since you ran away(あなたがいなくなってから寂しくてたまらない)"、"My nights are lone and dark are my days(私の夜は寂しく、暗闇は私の日々だ)"。正にDance Tunnelの状況を表しているような歌詞だった。そして、Fleetwood Mac "Dreams"のお馴染みのベースラインが聴こえ、それが最後のトラックとなった。長い拍手喝采の後、半ば涙声でアンコールを求める声が数人から上がったが、皆心の中では、この夜、そしてDance Tunnelは終わりを迎えたのだと分かっていた。
RA