Keita Sano - Miles EP

  • Share
  • 2016年、Keita Sanoの自由奔放な音楽は少しトラディショナルな方向に進んでいる。Turbocapitalismからのシカゴサウンド、Unfulfillmentからのグルーヴに特化したツール、もしくは、Sheik 'n' Beikからのダークなハウス/テクノ、そのいづれにせよ、岡山拠点のプロデューサーである彼の狂った一面は影を潜め、より巧妙な音使いと直線的な曲構成に焦点があてられるようになっている。サンフランシスコのレーベルSpring Theoryへの復帰作となる今回でもこの流れが続いている。「Miles」を構成しているのは反復するハウストラックだ。どのトラックにおいてもライブ的な響きを持ったパーカッションと、ジャズやアフリカ音楽のサンプルが多用されている。Sanoの他作品と同様、本作の彼もひとつのアイデアを形にしてはすぐに次のアイデアに手を伸ばしている。ディテールにもう少し意識が向けられていればうれしいところだが、ひそかに奇抜さがあり、面白く保たれている収録曲もある。 "Miles"に対してどのように応えればいいのだろうか。不揃いのドラム音にきらめくピアノサンプルはディープハウスを思わせるが、トラックのムードは暗く陰鬱としている。不意にトランペットを使ったブレイクが差し込まれると、マイナー調のフレーズがビート無しの状態で1分以上続く。そして、まるで何事もなかったかのように、突如、ブレイク前と同じ重々しいビートが戻って来る。"Varna"ではかたかたとしたパーカッションとペンタトニック調の歌声が重なり合ってアフロハウスに似たトラックを形成している。唯一気になるのは、ひしめき合ったレイヤーだ。そして、中盤でビートボックスのようなパートが入ってくることでグルーヴが神経質なまでに忙しくなる。"Miles"と同じジャジーな素材から作られ、孤独なサックスがリードパートを担っている"Blue"だが、こちらは驚きの要素に欠けている。Sanoの音楽には面白い要素が数多く存在しているが、何よりリスナーの記憶に刻まれるのは彼の意外性だ。
  • Tracklist
      A1 Miles A2 Blue B1 Varna
RA