DJ Sotofett / SVN ‎ - Current 82 (12 Mix) / Dark Plan 5 (Extended Mix)

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  • 朝5時のダンスフロア。大声で耳元に話しかけてくる友人。しかし、何を言っているのかよく分からない。友人に笑顔を返し、快くうなずいて、再び音楽の中に意識を浸透させようとする。その部屋は暗く煙たい。そして、少し密室的だ。そろそろ帰ろうかと思い始めるころ、ふたつの音程からなるベースラインが、積み上げられたスピーカーから発せられ、これ以上ないというくらいピースフルなコードがその後に続く。その瞬間、突如として完ぺきな雰囲気に変わる。友人は話すのを止め、首を垂らし、シャッフルするグルーヴの中へとハマっていく。その音色の嬉々としたパワーにより、疲労を忘れてしまうほど高揚し、これを味わうために遊びに来ていたことを思い出す。それこそがDJ Sotofettによるトラック"Current 82 (12 Mix)"だ。 YouTubeで90年代のレイヴ映像に書き込まれる控えめなコメントのようにノスタルジックで息をのむ雰囲気を喚起させるパワフルな音楽が新たに存在するならば、それはKeys Of Lifeのスプリット12インチに収録されたDJ Sotofettのトラックだ。Keys Of Lifeはフィンランドのエクスペリメンタルレーベルの牙城Sähkö Recordingsが手掛けるハウス色の強いレーベルだ。レーベル関係者全員に共通するゆっくりとした性格にふさわしく、今回のレコードの両面に収録されているのも、これまでにリリースされてこなかったトラックだ。SVNの"Dark Plan 5 (Extended Mix)"では控えめなディープハウス・モードの彼を聞くことができる。彼が控えめなディープハウスをリリースするのはSUEDの初期2作品以来だ(英語サイト)。メランコリーで瞑想的な同トラックはFred Pのようなプロデューサーが積み上げてきたスピリチュアルなニューヨーク・サウンドを彼なりに解釈したもので、SVNが手掛けただけあって、どことなく崩壊しそうな雰囲気がある。4分を経過すると、金属ブラシでこすっているようなスネアが投入される。そして、トラックの屋台骨を形成する微妙に異なり合うコードが明らかにしているのは、生演奏ならではのうれしい偶発性の余地が残されていることだ。 SVNの提供曲も素晴らしいが、それを霞ませてしまうのがSotofettの傑作トラックだ。昔のモデムのようなノイズが吹き付ける中、"Current 82 (12 Mix)"はスタートし、Madteoの2013年作"We Doubt (You Can Make It)"(英語サイト)からサンプリングしたボーカルが挿入される("We Doubt (You Can Make It)"はSotofettのリミックスとカップリングされていた)。昨年の傑作『Drippin' For A Tripp (Tripp-A-Dubb-Mix)』で、Sotofettは多くのアーティストとコラボレーションしていた。今回の彼はソロモードだが、"Current 82"はどこかキュレーション作品のように感じられる。それはおそらく、難解な実験性、不安定ながら執拗なベースライン、ビンテージのレイヴパッドなど、数多くの作品でも使われている要素がトラックの核になっているからだろう。Sotofettはそうした要素をすべてアレンジして、完ぺきで即座に親しみの沸く13分間のトラックを生み出している。まるで深夜に恍惚とした瞬間を届ける無名の名曲のように。
  • Tracklist
      A DJ Sotofett - Current 82 (12 Mix) B SVN - Dark Plan 5 (Extended Mix)
RA