Spacetravel - Time To Wake Up

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  • ベルリンでBinhから部屋を借りることになってからというもの、Luca Cara(aka Spacetravel)は人気プロデューサーになっている。イタリア人である彼がTime Passagesから発表した傑作デビューEPでは彼の型破りなサウンドが紹介されている(現時点では、EPの値段は無駄に高騰していない)。同作はいくつか異なるスタイルに足を踏み入れているが、そのいずれにも完全に当てはまるわけではなく、ディープハウスの悲しげな調子と、エレクトロの統合失調症的なエネルギー、ループするテクノのジャッキンなブリープ音、そして、クラシックなミニマルによる魅惑のスウィング感と映画的装飾音など、多様な要素を含んでいる。この路線を掘り下げているプロデューサーは彼だけではないが、同系統の作品では計算していびつな奇妙さを生み出そうとしているのに対し、彼の作品にはもっと瞬発的な一発録りの感覚がある。VeraとAlexandraによる新レーベルの第一弾として発表された彼の2枚目のEP「Time To Wake Up」でも、デビュー作を新鮮に仕上げていた奇抜なサウンドと抑制されたサウンドの組み合わせが探求されている。 「Time To Wake Up」は前作よりもどこか引き締まっており、作品の魅力にじっくりと磨きがかかっている。例えば、"Personal Control"は数分間にわたってシャッフルした後、くぐもったパッドがじわじわと段階的に前面に近づいてくる。そんなサウンドに安心していると、"Strange Experience"でのカーニバルのように上昇していくベースラインが一気に攻め立ててくる。そのため、この2曲はDJミックス(とりわけ、少しピッチを上げてプレイする場合)では非常に活き活きとしてくる。そうした極めて質素な構造に加えて、どのトラックでも面白いローエンドが使われている。Caraのベースラインはうねったり、素早く身をひそめたり、滑り込んだりして、あらゆるタイプの奇抜なサウンドエフェクトによって引き立てられた、活気のある雰囲気を生み出している。そのサウンドエフェクトは夜行性の虫のように甲高い音を立てながら素早く行き交う。このアレンジは盛り上がり必至の勝利の方程式だ。Caraは同系統のトラックを収めた2枚組12インチをPerlonからリリースしたばかりだが、今回の収録曲が最も魅力を発揮するのは、個性とペース配分を丹念にコントロールすることを重んじるDJたちに対してだろう。
  • Tracklist
      A1 Strange Experience A2 Ambient Microphones B1 Personal Control B2 Magic Track
RA