Dekmantel Festival 2016: Five key performances

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  • 今年のDekmantel Festivalの土曜日、筆者は同フェスティバルの創設者の1人Thomas Martojoに、前夜に出演したデトロイトのレジェンドJeff Millsと彼が話した内容について聞いた。Dekmantel全体の運営において重要なインスピレーションとなっているMillsは、今年で4年目を迎えたこのアムステルダムのフェスティバルで、計3回メインステージのトリを飾っている。「あなたの音楽を聴くと、僕は15歳の少年に戻ったような気分になる」と、MartojoはMillsに伝えたそうだ。 この、エレクトロニックミュージックに対する深い、誠実な情熱は、Dekmantel Festivalの全てのディテールにはっきりと表れている。例えばステージのセットアップを取ってみても、最高のサウンドだけではなく趣向を凝らしたデザインとなっている(Greenhouseステージにあれほどたくさんの植物を置く必要が本当にあっただろうか?おそらくなかっただろう。しかし、実際素晴らしいデコレーションだった)。またフェスティバルのラインナップはというと、ローカルアーティストと世界的なスターが対等な立場で並んでいる。オーガナイザーと参加者はいずれも、伝統的な意味でのヘッドライナーを重視していないように思われる。アムステルダムセ・ボスのメインステージを締めくくった3組のアクト(Jeff Mills、Dixon、Motor City Drum)はいずれもビッグネームだが、例えMCDEをDJ Harvey、MillsをRobert Hoodに入れ替えたとしても(HarveyもHoodも他のスロットでラインナップされていた)、それを気にする人が多くいるとは思えない。だが、それは同時にDekmantelの難点でもある。というのも、全3日間、全ステージにおいて、どこのステージに行けばいいのか分からなくなるほど、1日の最初から最後まで最高の音楽が鳴り続けているからだ。 今年のフェスティバルは過去最大規模での開催となった。全3日間に渡りアムステルダムセ・ボスとMelkwegで行われるメインイベントに加え、アイ湾岸に点在する様々なヴェニューでは、オープニングイベントとしてデイタイムのカンファレンスとライブミュージック・ショウケースが繰り広げられた。 それでは、Dekmantel Festival 2016のキーとなった5つのパフォーマンスを振り返ってみよう。
    Azymuth 今年は、ダブレジェンドLee "Scratch" PerryとAdrian Sherwoodによるコラボレーションや、ニューヨークのパンクファンクヒーローESGなど、胸が躍らされるライブセットが盛りだくさんだった。オープニングナイトでは、AzymuthとTony AllenがEYE Film Instituteの対岸に位置するTolhuistuinにてパフォーマンスを披露した。コアメンバー達が70歳間近のジャズファンクバンドAzymuthは、今回のDekmantelの中でも意外なブッキングのように思えたが、実際にはフェスティバルの週末の幕開けを心地よく飾ってくれた。同バンドのドラマーIvan Contiは、スローなジャズやハードなドラムンベーススタイルなどで緩急を付け、クラウドをリズミカルなジェットコースターに乗せた。ある瞬間、誰かがサンバに乗せて雄叫びを上げた。それを聞いたContiは微笑み、バトゥカーダスタイルのドラムソロを始めた。最後の1曲は同グループ最大のヒット曲"Jazz Carnival"。 その演奏中、ベース奏者はドラムのContiに加わる前にスカーフを取り、下に着ていたサッカーオランダ代表のユニフォームを露にした。その数時間後、黒眼鏡とステージの照明でギラギラと輝くハットを身につけたTony AllenがAzymuthのセットに続いて登場。Contiがそうしたように、自身が現代最高峰のドラマーであることを証明するようなパフォーマンスをしてみせた。
    Moodymann 太陽が照りつける金曜日の午後には、Kenny Dixon Jr.が、同じくデトロイト出身のAmp Fiddlerによるライブセットに続いて登場。彼のセットは、青々とした熱帯植物でデコレーションされた半屋内のステージ、Greenhouseの雰囲気に完ぺきにマッチした。彼はFred Wesleyの"House Party"をかけた後、マイクを手に取りフロアに向けて「What's happenin', Amsterdam?」と声をかけ、そこから数々のクラシックスを展開。Jimi Hendrixの"Purple Haze"から、皆の大合唱を誘ったOl' Dirty Bastardをシームレスに繋ぐ瞬間も。その他にも、レコードバッグからGeorge Clinton、The Doobie Brothers、Roy Davis Jr.、Prince、そしてParanoid Londonを引っ張り出した。
    Hunee & Antal MelkwegでのAntalとのB2BセッションでHuneeがまず最初にしたのは、Mary Clarkの"Take Me I'm Yours"に、彼のDJの1曲目として定番となっているThe Pointer Sisters "Happiness"を突っ込んだことだった。1978年発表のこのディスコジェムでのスタートには、フロアにいた全員が陽気な気分にさせられた。程なくしてHuneeはシャツを脱ぎ捨て、 そこから4時間、彼とAntalはクラウドを踊らせ続けた。(Antalは後に、Melkmegで「あれほどのエネルギーを見たことがない」と言っていた。)ディスコ/ハウスのクラシックスの応酬が続いたほか(Kerri Chandlerの"On My Way"に至っては2回かかり、2回目は最初の1、2分間ベースがカットされていた)、Chiwonisoによる傑作トラック"Zvichapera"のような変化球が投下される場面も。午前7時に音が鳴り止んだ時、彼らとフロアの観客達は疲れきっていながらも(実に長い1日だった)、心から幸せそうな表情を浮かべていた。
    Robert Hood UFOは、Dekmantelの中でもテクノに特化したステージだ。太陽の輝く中、真っ暗で汗ばむテントに踏み込むだなんてあまり気が進まないかもしれないが、一度その中に入れば、熱気や暗さといった不快感を起こさせそうな要素すら、音楽の強烈さを引き立たせる補完材へと変わる。日曜日のRobert Hoodは、ディスコのループや高速のドラムトラック、フルスロットルのヴォーカルテクノなどを行き来する、執拗でファンキーなDJセットを披露。音楽は激しかったが、Hoodのクイックミックスとファンク感が、フロアのエナジーレベルを完ぺきな状態に保っていた。また、彼自身のプロダクションがいくつかのスペシャルな瞬間を演出。その中でもハイライトとなったFloorplan名義の"We Magnify His Name"では、ヴォーカルの「For he is worthy」というリリックに合わせクラウドが雄叫びを上げ、Hoodは天国に向けて両手を挙げていた。
    Motor City Drum Ensemble 初開催からまだ4年しか経っていないにも関わらず、Dekmantelのデイタイムステージのいくつかには、既にアイコニックなものが感じられる。例えばSelectorsステージは今年、その名を冠したスピンオフフェスティバルがクロアチアにて開催される。昨年、そのSelectoresステージに出演したMotor City Drum Ensembleだが、今年は日曜夜、陽が落ちると背後のLEDスクリーンが壮大に光り輝くメインステージの、クロージングアクトとして抜擢された。だが、MCDEにとってこのような環境は珍しくない。彼は今年、リヨンのNuits Sonoresで大観衆を前にプレイしたほか、クロアチア・Dimensions 2015でのJeremy Undergroundとのクロージングセットは、もはや伝説として語り継がれている。それでも尚、Dekmantel最終日の夜、あのスクリーンの前で彼のシルエットが飛び跳ねる様子を見るのは、新鮮な気分だった。そして彼はプレイ開始後、すぐにその実力を発揮。Andrésの"New For U"やLoggの"You've Got That Something"、そして最も印象的だったTeddy Pendergrass "You Can't Hide From Yourself"などの選曲によって、このシャイなレコードディガーが、最高の瞬間を生み出す能力を十二分に持つDJだということが証明された。
    Photo credits / Bart Heemskerk - Azymuth, MCDE Duncan Jacob - All others
RA