Pessimist - Balaklava

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  • 音そのものよりも音同士の隙間が重要である、という決まり文句を誰しも耳にしたことがあるだろう。動と静は密接につながり合った対極であり、それを我が物にしようと生涯のキャリアを費やすプロデューサーもいるほどだ。それには音圧と隙間の繊細なバランスが求められる。そしてそれはブリストルのPessimistがBlackest Ever BlackのサブレーベルA14から発表した最新12インチのAサイドで実現していることだ。 Blackest Ever Blackのファンなら"Balaklava"がBerlin Community RadioでKiran Sandeが担当したプログラムで使われていたことに気付くかもしれない。恐ろしくミニマルで、その雰囲気は停滞した空気で満たされており、一度聞けば脳内に刻み込まれる類のトラックだ。実際はそれなりの数の素材が使われている一方で、アンビエンスは完全に取り除かれていながら脅威に満ちている。長く見過ごされていた残虐行為の現場に出くわしたかのような感覚だ。レコード針がランアウト・グルーヴ(収録曲が終了してからレコード盤の中心部に至るまでの溝)の上を円状にトレースした後、Pessimistらしい浸透していくリム/ハット/キックのコンビレーションが静止した表面上を滑り込んでいく。しかし、ここでの明らかなハイライトは低域用キャビネットを潰しているかのように激しく揺れるサブベースの深い急落だ。 "Balaklava"が抑制の実践であるとするなら、"Orphic"は利用可能な空間をすべて埋め尽くしていると言える。同トラックの執拗な強烈さはRegisの"Execution Ground"をBPM170にまで速めて、爆発するシンセと擦り付けるようなテクスチャーだけにしたかのようだ。かなり急速なトラックで、絶え間ない前進を求めて緩んだ箇所を切り離しているかのようなサウンドだ。しかし、ハーフステップの鼓動がしっかりとしているので、この暴走する膨大な力に合わせて快適に巡行することが可能だ。
  • Tracklist
      A Balaklava B Orphic
RA