Soft Talk - Mercy EP

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  • 先月、デンマークのプロデューサーNatal ZaksはInverted Audioに対し次のように語っている(英語サイト)。「僕にとって音楽制作を向上させる最良の方法は、制作しない状況と上手く付き合っていくことなんだ」。これは人が羨むような発言だろう。多くの人たちはスタジオで過ごす時間とモチベーションを保つのに苦労しているのであって、決してその逆ではない。彼のウェブサイトに掲載されているディスコグラフィーによれば、2014年の1月以降、彼は20以上のリリースに携わっており、様々な名義を使いながら、Yieldや自身のレーベルHelp Recordings、そして最近ではDekmantelといったレーベルから作品を発表している。さらに印象的なのは彼の一貫性だ。Central名義によるアシッドサウンドや、11人のプロジェクトRegelbauにおける心地よいブレイクビーツ・ハウスなど、いずれの作品を聞いても暖かく深みのあるサウンドに取り囲まれる。要するに、Zaksは知っておくべきアーティストであるということだ。 Central名義でDekmantelから2作品をリリースする前に、ZaksはSoft Talkという新たな名義でOrigami Soundから4曲入りの「Mercy」をさらりと発表している。彼にとってブカレスト拠点の同レーベルから3枚目となるこのEPは彼のベスト作品であり、彼が提示する、素材を削ぎ落とした土着的なパーカッシブハウス・サウンドは多様なムードへと成型されている。表題曲は控えめだが変化に富み、崩したドラムとシャッフルするスネア、そして、心地いいパッドを土台にして男性ボーカルが"mercy"と繰り返している。使われている素材が静かに落ち着くことはなく、4小節ごとに必ず変化している。 熱狂性を増した"Radar"はいくぶんBPMが速く、キックと高らかなシンセの隙間でウッド系のサウンドがカタカタと音を立てている。Joey Andersonのように変わったテクノをプレイするDJのセットで上手く機能しそうなトラックだ。本作で明らかに突出しているのが"Visit"で、こちらは存在感のあるねっとりとしたベースラインと機能的な構造のため、ZipやDJ Sprinklesのセットに合いそうだが、"Ladywalk"はこのふたりにはソフトでスペーシー過ぎるだろう。雲のように優雅に広がるとりとめのないジャジーなギターと広大なコードを通じて、リスナーの感情が掻き立てられる。
  • Tracklist
      A1 Mercy A2 Radar B1 Visit B2 Ladywalk
RA