Vent Launch Party feat. Ata

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  • 表参道に新しくオープンした多目的スペースWall & Wallで、週末に開催されるダンスミュージックイベント“VENT”。初日の8月26日(金)は、ヘッドライナーとしてドイツ・オッフェンバッハの名門クラブRobert Johnsonのディレクター兼レジデントDJであるAtaを迎えて開催された。筆者と同じく、かつて同地の前身となったスペースに訪れたことがあるならば、エントランスからフロアまで、構造自体が全くの別物へと刷新された空間に驚くはずだ。メインフロアに向かうと、すでに二番手のDJ Noaがヒプノティックかつじっくりと上昇していくようなハウスセットで続々と集まるオーディエンスをロックしていた。サウンドは解像度も躍動感も高次元で、思わず笑ってしまうほど。デジタル的なハイファイ感があるものの、耳に痛い部分や嫌な圧迫感もなく、オープンしたばかりとは思えないほどつけ入る隙のないクオリティだ。 中央に一本の樹が植わったメインフロア横のバーラウンジは洒落っ気もあるが、決して過剰な形ではなくむしろ落ち着いたムードがある。装飾もいたってシンプルで、居心地の悪さを感じることはほぼない。メインフロアからもほどよく離れたラウンジスペースも設けられており、別個の空間として成立している。立ち寄った際のDJはEUREKA!クルーのMidori Aoyama。さりげなくファンキーなハウスを軸としたスムースなDJで、ゆるやかに踊れる空間を演出していた。 Noaに続くメインフロアのDJはTake & HisashiによるユニットMonkey Timers。よりディスコ色を強めつつリエディットやシカゴライクなアシッドハウスも飛び出す色彩豊かな選曲で、ダイナミックなグルーヴを生み出していた。フロアもやや窮屈なほどに人が集まるなか、大味なブレイクもこの時間ならではのさらなる熱気をもたらしていた。
    華やかなムードのなか満を持して登場したゲストアクトのAtaは、流れを途切れさせることなく、開始数曲でソリッドなハウスへとスムーズに転換していく。欧州ディスコ系のほどよくエモーショナルな展開も交えつつ、低域のグルーヴをぶらさずに洗練する流れはまさに匠の技。中盤以降も遊び心とドリーミーな感覚に満ちた選曲を重ね、フロアのひとり一人がこれまで以上に思い思いのダンスに没頭しているようであった。後半はトランシーなシーケンスの折り重なりでより一層フロアを虜にし、ラストはYello-Bostichなど、エクレクティックな80年代ディスコ~ニューウェーブで締めくくった。 オープン前から「世界初となるアルミハニカム平面駆動ユニットを採用した、新機構SRスピーカー」による高解像度のサウンドを売りとしていたが、フロアとバースペースを大胆に壁で分離し、フロア内にも吸音・防音の調整の跡が見られるなど、「単にハイクラスなサウンドシステムを用意した」だけにとどまらない音へのこだわりを実感することができた。設立段階から関わったというHIRANYA ACCESSの藤田氏もフロアで踊りながら常に調整を行っており、生音が多い楽曲や、古めのレコードの平面的なサウンドよりも、デジタル色強めな昨今のトラックのほうがより立体的に感じられたものの、出音のバランスと表現力は今の段階でも都内トップクラス。もちろん音だけでなく、スタッフの装い含めて統一感あるデザインやパーティーの場としての居心地の良さも申し分ない。今後も調整を重ね、さらに楽しめる空間が作られていくかと思うと楽しみでならない。 Photo credit: Yoshihiro Yoshikawa
RA