Body & SOUL Live in Japan 2016

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  • 梅雨入りの報に不安を感じつつも、当日になってみればゆるやかな陽が差す過ごしやすい気候となった晴海埠頭。ついに20周年を迎えたBody & SOULだが、今回前売りチケットが過去最高の売上を記録したとのことで、かつてないほどに待望されていると実感した。もはや説明不要のレジェンドFrancois K.、Joaquin "Joe” Claussell、Danny Krivitの織りなす至福の時間は、今も多くの音楽好きを惹き付けてやまないのだ。 3時を回るころに到着すると、早速Larry Levanが手がけたクラシックチューンClass Action "Weekend"をアイソレーターとエコーで弄りまくるNYらしさ全開のサウンドが耳に飛び込んできた。4名のダンサーが気ままに踊る奥で、3名のDJがリラックスした佇まいで途切れなくDJを続けている。選曲は正統派なガラージサウンドと機能的なNYディープハウスを往復するような流れで、フロアの方向性をガッチリ作りこむというよりは、三者三様のサウンドをプレイしているような印象だ。Joeはまさに赴くままに流麗なジャジー・ハウスやパーカッシブなトラックをロングタームでかけたと思えば、Francoisは思いもよらぬタイミングで飛び道具的な楽曲をプレイする。Dannyは卓越したテクニックで両者のバランスをとりつつも印象的なクラシックチューンで攻めることも。特に20周年のために用意されたボイスメッセージをブレイク的に挟み、エモーショナルなドラムンベースへと移行する急展開はFrancoisの十八番ともいえるものだったが、そこからDannyがBPMを保ちながらJoe Jackson "Steppin' Out"のピアノフレーズへとつないだ瞬間の爽快さは、他では感じたことのないものだった。その後もJoeが土着的なレゲエもプレイするなど、ジャンルもグルーヴも横断する音楽的な時間が続いた。
    平均年齢は30代半ばといったところだろうか。Space Lab Yellowや、さらにさかのぼった時代から遊んでいたであろう筋金入りのパーティー好きから、カジュアルに音楽とイベントの雰囲気を楽しむ客層まで入り交じり、フラットな空気感を生み出していた。サウンドシステムは、Pioneer Professional Audioが満を持して発表したGS-WAVE。Paradise GarageやThe LoftといったNYの伝説的なディスコ・パーティーにてサウンドシステムを担っていたRichard Longが設計し、同じくParadise Garageの音響に関わったGary Stewartの協力のもと生み出されたシステムということで、NYディスコ・ハウスの歴史を継承してきた3人が鳴らすシステムとしてもこれほど合致したものは無いだろう。実際の音はかなり硬質でスピード感がある現代的なもの。会場内のどこでも踊れるほどにパワフルだ。近年のシステムはハイとローに注力するが故に生音の楽曲だと違和感を感じる瞬間もあるが、この日はそのような感覚を抱くことなく、美麗なメロディーや力強いヴォーカルを心置きなく楽しむことが出来た。
    徐々に陽が沈み、Arielのライティングが発揮される時間帯に差し掛かると、オーディエンスもフロアへと呼び寄せられるように集まってくる。そんな絶頂の時間でプレイされたInner Life "Ain't No Mountain High Enough"には、否応無く会場中を高揚させていくのが見て取れた。一転してFrancoisが夜の始まりを告げるようにややアッパーなテックハウスを展開していく。Danny、Joeも追従するなかで、先日TransmatからリリースされたHiroshi Watanabe "The Leonids"がスピンされる瞬間も。3者ともに上昇感あるグルーヴを保ちきった状態でクライマックスを迎えた。 もちろんこれで終わりのはずもなく、アンコールではLoleatta Holloway "We're Getting Stronger"やTeddy Pendergrass "The More I Get, The More I Want"といった、音楽愛に溢れるメッセージが込められたクラシックを惜しみなくプレイ。ここ一番の鮮やかな衣服をまとうステージ上のダンサーにも煽られつつ、ラストは3人のDJではおなじみのBrainstorm "Lovin' Is Really My Game"!ダイナミックなグルーヴで最後まで躍らせてくれた。終幕後はFrancoisによる挨拶はもちろん、主催の石原氏もブースに現れ「来年も必ずやります」と力強く宣言。しかし、この上ないロケーションだった晴海埠頭はラストとのことで、次はどんな場所でどのような形で開催されるのか楽しみでならない。 時代に左右されず輝きを保つ音楽の、真価を発揮するための場としてBody & SOULはこれからも必要とされるだろう。個人的にも、ここまで陰のない、ポジティブさが途切れずに続くパーティーは他には思いつかない。涼やかな風も、サンデーアフタヌーン・ パーティーらしい緩やかな空気も、すべてがとびっきりの祝祭感につながるようなスペシャルな体験であった。
    Photo credit / gaku maeda Niiiyan A.Nitta
RA