Keita Sano - EYE

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  • リリースする作品毎に驚く程に変化を見せる音楽性は一切の纏まりがないと言うべきか、それともアーティストの多様な音楽性の賜物なのか、その評価を分けるモノとは一体何なのだろうか。インタビューでも口数少なく淡々とした回答を行うKeita Sanoは、そんな事もあって決して自らの音楽性を絞らせるような活動をせず、その結果としてMister Saturday Nightや1080pを含む新興勢力レーベルにその才能を買われ、ジャンル/国境を越えて今注目を集めるアーティストの一人となっている。 そしてSanoにとって2016年度では早くも3枚目となる本作は、今度はディスコ/ハウスを得意とするニューヨークのLet's Play Houseからのリリースとなり、またもやワールドワイドな評価を得るには絶好の機会となった。相変わらず1枚のEPの中でも曲調はバラバラでとりとめのない作風を披露しているが、ややギラついたシンセが昂揚感に溢れたメロディーをなぞるディスコ風な"Keep An Eye Out Pt.2"は、深夜帯のドラッギーさとブギーなノリで新機軸を感じさせる。一方で簡素ながらも臨場感のあるビートと鈍いアシッドサウンドを打ち出した"Own Signal"や"TRMK"は、シカゴ・ハウス及び昨今のロウ・ハウスの系譜として、比較的Sanoらしい無骨さが感じられる曲だ。"Smoker"は更に金属的な錆付きを帯びた鈍いリズムによって、無機質かつ無感情なマシンビートがDJツール性を磨いている。それだけではない、不気味さで覆い尽くし奇妙なグルーヴを刻むエレクトロ調の"Fix"、ガヤ声のサンプリングを用いて黒さが滲み粘度の高いディスコ・ハウス仕立ての"Think Twice"と、何故にこれだけの振れ幅のある曲群がこのEPに収まっているのか不思議な程だ。だがひとえに踊るためのダンス・ミュージックへの好奇心が音楽制作の原動力であるとしたら、なるほど確かにジャンル的な違いはあれど目的は同じ点に帰結しているのだ。
  • Tracklist
      A1 Keep An Eye Out Pt. 2 A2 Own Signal A3 Smoker B1 Trmk B2 Fix B3 Think Twice
RA