Nisennenmondai - #N/A

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  • Nisennenmondaiの活動は15年に及ぶが、彼女たちを最近知ったというファンが増えてきている。その流れが起き始めたのは2011年。日本人3人によるこのバンドがノイジーでコズミッシェスタイルのロックにダンスミュージックからの影響を取り入れたときだ。以来、彼女たちは「少ない要素で多くを表現する」という信条をマゾヒスティックなまでに突き詰めてループ主体の長編曲を制作するようになった。そのうちの数曲が扇動的なライブショウを通じて研ぎ澄まされた傑作『N』に収録され、昨年には同作を再録音した『N'』が日本限定で発表された。こうした極端な姿勢は執着に変化していく危険性があるもので、彼女たちはフレッシュな感覚を保つためにコラボレーションという手段を取るようになった。昨年はリミックスワークとライブショウでShackletonと関わりをもった彼女たちだが、今回の『#N/A』ではダブのイノベーターであるイギリス人アーティストAdrian Sherwoodと手を組んだ。 SherwoodにはNisennenmondaiのサウンドを不安定にする効力がある。本作でも『N』と同様のハリのあるヒプノティックなグルーヴが唸りをあげているが、Sherwoodのミキシング処理により、弾力性のあるディレイとサウンドプロセシングのレイヤーが施され、構造が変化しながら大きくうねっている。Sherwoodが行っているのは引き算の手法だ。そのため最初から要素が少ない楽曲をミキシングするときはリスクが高くなる。Nisennenmondai自身のとてつもない強度と彼のミキシングは常にマッチしているわけではない。1曲目の"#1"はトラックが終了するまでの10分間に渡り、ぎこちなく暫定的な印象であり、さらに尺が長いラストトラック"#5"ではSherwoodが躍動するハイハットを霧状の心地よいサウンドへ手際よく変化させているが、インパクトのある瞬間に近づくことはない。 『#N/A』は中盤に差し掛かると大胆さを増していく。じっとりとしたテクノの領域に向かう"#3"はもっと長い方がいい。最初と最後の疎ましい上昇音を引き伸ばせば、それだけで壮大かつドラッギーなトラックになりそうだ。"#4"では延々と繰り返されるベースの音に対しスピーディーなキックを打ち込むことで、本作の単一的なペースに変化が生まれている。Sherwoodもエフェクトを大胆に使い、後方で波打つテクスチャーによって本作で最もサイケデリックな場面を実現している。 こうした短めのトラックを聞いていると、もっとコンパクトで魅力的に『#N/A』を仕上げられたのではないかと思えてくるが、"#2"ではNisennenmondaiとSherwoodは長尺のトラックも制作できることを証明している。同トラックは非常にハッキリとした構造をしており、吹き付ける乾いたギターノイズの中から機械的なグルーヴが着々と出現する。7分を過ぎる頃には空気を一掃するかのようにハイハットが挿入される。その後に続く低域の鼓動はおそらくSherwoodの手によるものだ。その低域が不安そうに鼓動しながらフェードインしてくると、ビートが一度ミュートされた後に低域を中心として再構築されて戻ってくる。そこからSherwoodはさらにワイルドにトラックを処理している。期待通り、彼特有のくぐもったリバーブの爆発音やソナーのような音によって全く別の一面がNisennenmondaiのサウンドに加えられている。
  • Tracklist
      01. #1 02. #2 03. #3 04. #4 05. #5
RA