Pioneer DJ - CDJ-2000NXS2

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  • Pioneer DJがCDJ-2000とrekordboxをリリースした瞬間、デジタルDJの新時代が幕を開けた。包括的に管理できるプレイリスト、複雑なキューの設定、そして豊富なトラックコレクションが好きだという理由からラップトップを選んでいたものの、基本的なミックスとエフェクトしか使用できなかったDJたちは、このふたつの製品の登場によって不安定なラップトップを持ち歩く必要がなくなった。多くのDJにとって、CDJ-2000とrekordboxとのコンビはフィジカルとデジタルの長所を上手く引きだしているように感じられた。やがて、CDJ-2000は、同期機能、波形のカラー表示、クオンタイズ機能を備えたCDJ-2000Nexusに引き継がれたが、先日、その更に後継機となるCDJ-2000NXS2がリリースされた。一見したところ、これまでとさほど違いはないように見えるルックスだが、Pioneer DJの狙いが随所に感じられる。 最初に気付く一番大きな違いは新しいディスプレイで、これまでの6インチから7インチにサイズアップされた。しかも、サイズアップが図られただけではなく、2014年後半にリリースされたCD機能なしのXDJシリーズに搭載されていたタッチディスプレイに変更された。しかし、XDJからはGUIが一新されているため、共通点は見出せない。ディスプレイの他には、ロータリーセレクターを取り囲むようにSHORTCUT、TRACK FILITER、BACK、TAG TRACKボタンが追加された。 そのボタン群とHOT CUEを除けば、デザイン・レイアウト的な変更はほとんど見受けられないが、ほぼ同じデザインを維持したことは評価に値する。DJにとっては慣れている環境かどうかが非常に重要だからだ。暗く煙っていて、状況が把握しにくいクラブではことさらそれが重要になる。身体的記憶は自分の目の前に置かれている製品を良く理解している時に蘇るので、慣れ親しんだレイアウトはDJプレイに集中する助けになるだろう。しかし、ほぼ同じと言っても、その違いは決して小さくはない。NXS2を初めてクラブで使用する際には、慣れるための時間を15分~20分は見ておくべきだろう。特にBACKボタンの位置が変わっている点には留意したい。 デザインとレイアウトに慣れれば、他の機能を色々と試せるようになるはずだ。NXS2のディスプレイはRGBの波形表示が採用されており、赤が大きな音量と低周波数を、青が小さな音量と高周波数を示している。このカラー表示はNXS2では大事な要素で、たとえば、左上のUSBデバイス挿入口がLEDで縁取りされて視認性が高まっている他、HOT CUEもrekordboxで任意の色に設定可能になっており、たとえば紫なら重いキックなど、ポイントが簡単に視認できるようになっている。この色分けはディスプレイとHOT CUEボタンにも反映される。この他にもトラック、プレイリスト、デバイスの色分けをするための様々なオプションが用意されており、ディスプレイを見る時間を最小限に抑えるようになっている。 TRACK FILTERボタンは2000シリーズにおける新しいコンセプトで、このボタンを長押しすれば、BPM、Key、Ratingなどでトラックの絞り込み検索が可能になる。たとえば、プレイされているトラックのBPMから3%の範囲内のトラックだけを表示することが可能になるというわけだ。また、条件を組み合わせることも可能で、たとえば、一定のBPMの範囲内で、しかも楽曲のキーが重なるトラックだけを選べる。条件の設定後にウィンドウを閉じてプレイリストやコレクション上でTRACK FILTERボタンを押せば、絞り込み検索が行われ、条件に当てはまるトラックを探し出してくれる。更に優れているのが、ダイナミックな反応で、マスターにトラックをロードすれば、検索されたトラックはそのBPMやキーなどに合わせて変化する。これは非常にクールな機能で、Traktor DJ for iPadのRedommended Tracks機能に似ているが、こちらの方が細かい。単純なオプションではなく、こちらが考えたこともなかったトラックを表示したり、すぐに膨大なプレイリストを用意したりしてくれる。 CDJの機能が増えるにつれ、カスタマイズ機能も増えている。新たに搭載されたSHORTCUTボタンはメニューを行き来することなく、便利な設定にアクセスできる。波形色の変更、MY SETTINGSのSAVEとLOAD、そして新たに追加されたPHASE METERやHOT CUE AUTOLOADにアクセスできる他、最も重要な新機能のひとつクオンタイズのビートサイズの変更も行える。NXS2ではクオンタイズのビートサイズが1/8拍まで細かく設定できるようになっており、これは非常に嬉しい追加なのだが、クオンタイズをトランスポートコントロールでオフにしながら、LOOP IN / LOOP OUTポイントやHOT CUEなどで使用できない点は納得がいかない。機能ごとにクオンタイズとビートサイズがアサインできるようになれば非常に嬉しいアップデートになるだろう。 HOT CUEへ話を移すと、NXS2ではバンク2個 x ボタン4個の組み合わせで合計8カ所までの設定が可能になった。トラックのプレイ中に空いているボタンを押せばキューがアサインされる。スリップモードではバックグラウンドで元のトラックが再生されている間に任意の位置をスクラッチしたり、ループさせたりできるので、クリエイティブなプレイができるようになるだろう。もうひとつの新機能がNEEDLE COUNTDOWNで、指定したポイントへのカウントダウン表示を秒数ではなく拍数で表示させることができる。波形だけでは情報が十分でない場合は、これを使ってあらかじめ展開を組んだり、その場でループを設定したりできる。 タッチディスプレイは、ループモードやビートジャンプのようなパフォーマンスの選択肢を増やしてくれるが、同じ機能を担っているボタンを触る方がベターだろう。タイミングがカギとなる機能はタッチディスプレイではリスクが高く、汗ばんだクラブ環境ではそのリスクは更に大きくなるからだ。今回のテストでのタッチディスプレイの動作は非常に安定していたが、タグ付けなどについては、TRACK FILTERや新たに追加されたキーボードを使う方が理に適っている。 サウンド面に関しては、96kHz/24bit対応となり、32bitのD/Aコンバータが追加された。また、多くのユーザーが長年望んでいたFLACとALACも対応となった。対応フォーマットが増えた点は嬉しいが、音質のアップグレードに関しては、現在96kHz/24bitでダウンロードできる音源が少ないことを考えると将来を見越した追加と言えるだろう。また、非常に面白い新機能のひとつと言えるのが、DDJ-SP1が接続できる点で、DDJ-SP1を接続すれば、すべてのホットキューが同時に扱えるようになる。この先MIDIコントローラ対応になることに期待したい。 CDJ-2000NXS2は素晴らしい製品だが、高価なフラッグシップモデルである以上、当然とも言える。新機能の数々はトップDJが現場でNXS2を指定するようになるほどのものではないが、タッチディスプレイ、TRACK FILTER、HOT CUE、ハイレゾ対応などは嬉しい追加だ。価格については議論が続くはずだが、CDJ-2000NXS2が業界の基準を引き上げる重要な製品であることに変わりはない。 Ratings: Sound: 4.5 Cost: 3.7 Versatility: 4.3 Ease of use: 4.4
RA