Inoue Shirabe - Achromatic Illusion

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  • パーソナルなタッチを重んじているAntinoteは当初、パリにいる関係者や友人たちによる音楽のみをリリースしていた。その流れが変わったのは岡山拠点のプロデューサーShirabe Inoueのデビュー作を昨年リリースしたときだ。しかし親密さを重んじる精神は引き続き保たれている。Inoueのハウスミュージックには多幸感を得た後に訪れる危うくほのかな感覚が塗り込まれているのだ。「Achromatic Illusion」では、そうしたパーソナルな心地よさが前面に打ち出されている。 "Function Spring"では主旋律と対旋律が魅力的に絡まり合い、オルガン、フルート、そして、エレキギターに似たシンセサウンドがひとつにまとまって整然と複雑なパターンを生んでいる。そして、直線的で控えめなパーカッションが夕暮れ時のムードを程よく灯し出している。Bサイドの"Gravitation Of Acidtree"は、4つの音程の揺らめくベースラインによってパンチのあるトラックになっているが、引き続きInoueによる繊細な感覚が軽やかなサウンドや細やかでスムーズなアシッドシーケンスに表れている。ここでも彼はパーカッションを柔らかく処理しており、スネアは彼方から飛び散るように打ち込まれ、シェイカーは深い部分でそっと音を立てている。"Function Spring"と同様、"Gravitation Of Acidtree"でもメロディが極めて丁寧に扱われている(まるで邪魔にならないように端に避けているかのようだ)。Inoueはここまで控えめにならない方がいい。2015年の軋むシューゲイズトラック"Ysyeyxy"がそうだったように、彼の音楽は挑戦的な方がずっと魅力的だ。
  • Tracklist
      A Function Spring B Gravitation Of Acidtree
RA