Various - Disco Mantras

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  • たった6枚のシングルをリリースする間にバンクーバーのMood Hutは限られた場所でカセットを扱うレーベルから、年末のチャート(英語サイト)に食い込む限定12インチを発表するレーベルへと成長した。Jack Jによるハウスグルーヴ渦巻く"Something (On My Mind)"に続き、Slow Riffsの浴室アンビエンスが発表されたのには驚いた。昨年はたった3枚しかシングルを発表していないのに、同レーベルはRA Poll: Top 20 labels of 2015の13位にランクインしている。 このような人気を築き上げていく中、Mood Hutは常に変わった道を歩んできた。彼らにとって初のフルレンクス作品もその例外ではない。CloudfaceやHashman Deejayといった関連アーティストたちがBlack Opal(英語サイト)やFuture Timesからリリースしているアルバムに対し、Mood Hutが提示するのは『Disco Mantras』と名付けたコンピレーションだ。本作のプロデューサーに関する情報は全くなく、「PHに捧げるBlue heronのトリビュート」や「Lion HeartとCee Zee Du」といったプロデューサーのクレジットが記載されているが、収録された7曲を誰が手掛けたのかはよく分からない。アルバムに関する資料には「バンクーバー周辺の辺境や湿地から直送された緩いコラボレーション」と記されている。 ここでポイントとなるのは「緩い」と「湿地」だ。『Disco Mantras』はガスのようにかすんだ印象で把握するのが難しい。本作は「新曲」であるとされているが、無名の既存曲をループしたりエディットして、サイケデリックなエフェクトを軽くかけているようなサウンドだ。"Paul's Blues"のソウルフルに震える声やホーン、"Memories In Time"のきらめくキーボード、ダブ処理されたハンドパーカッションの隙間から微かに聞こえるdancingという声など、その音源が何であれ、その正体を掴むのは不可能なまでにぬかるんでいる。"Sunny Dae"を聞いて同トラックの染みわたるアフロビートの出所も同じく不明だとこのレビューに書こうとしていたのだが、まどろみの中から高らかなギターが現れた瞬時、The King Of Jujuが元ネタだと分かった。何度も『Disco Mantras』を聞いていると、ある一面が見えてくる。それはつまり、不鮮明なエディットが鮮明な瞬間を見せることだ。 時折、こうしたエディットがMood Hutの全要素を網羅する場面もある。例えばまどろむ"Hymn To A Whale Talker"は驚くほど捻じこまれたダブレゲエのビートを軸に構築されており、進行に合わせてトラックと組み合わされる流水音やテープの回転音、そして、ニューエイジ的フルートはどれも漂いながら浮かんでは消え去っていく。"Thirstin"や"Bubble World"といったスタイルのトラックをアルバムに求めるべきではない。『Disco Mantras』はダンスフロアを再現しようとしているのではなく、Mood Hutのロフトパーティーの雰囲気を掴み取ろうとしているのだ。
  • Tracklist
      01. Sunny Dae 02. Memories In Time 03. A Perfect Shift 04. Meteor Connection 05. Hymn To A Whale Talker 06. Bless The Weather 07. Paul's Blues
RA