Surgeon - Search Deep Inside Yourself

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  • BlueprintがSurgeonを皮切りに20周年を記念したシリーズを始めると発表したとき(英語サイト)、もっともだと思った。Anthony Childの一番有名な名義Surgeonは、Blueprintの中核を成すテクノサウンドを体現していながら、同時に異なる視点も提供している。それはつまり「少し古さのある新しさ」だ。さらに彼は、97年のコラボレーション12インチを除けば、同レーベルからしっかりとしたリリースをしたことがない。先のアルバム2枚ではChildが近年夢中になっているモジュラーシンセをそれぞれ異なる方法(英語サイト)で探求していたが、今回の「Search Deep Inside Yourself」では、彼が再びダンスフロアに帰ってきたことが分かる。 本作に収められているのは、最も得意としている分野で再び制作を始めたテクノ・エキスパートのサウンドだ。『From Farthest Known Objects』でのざらついたテクスチャーは健在だが、ここでは急流の中を進むいかだのようなグルーヴに吸い込まれている。"Search"では、鼓動するリード、けたたましいシンセ、荒れ狂うドラムサウンドなど、従来の要素をもとに疾走感のあるアンセムが綿密に構築されており、素晴らしく澱んでいる。そして"Inside"では澱みに拍車がかかっている。荒く仕上げたリードによってクライマックスへと向かっていきそうな雰囲気になるが、Childはクライマックスではなく、メインのモチーフ上でループを逆再生させて、1周期ごとにシンセの厚みを増している。 荒々しく駆け抜けるタイプのダンスミュージックというイメージで見られるChildだが、それでも彼の作品は多様な要素が絡み合ったものだということを「Search Deep Inside Yourself」は思い出させてくれる。例えば不機嫌なテクノとでも言えそうな"Yourself"はひどくねじれたトラックだが、同時にとても液体的で、サウンドの波がリスナーに激しくぶつかって来るのではなく、そのまま一緒に洗い流してくれる。そして"Deep"は一見、本作で最もストレートな内容だが、表面下には綿密な空間が広がっている。そして、ステレオの音場を旋回するサウンドの様子が素晴らしい。そのタイトルが暗示しているように「Search Deep Inside Yourself」は内省的な印象だ。Childは自分の内側を見つめ、ここしばらく彼が発表してきた中で最もSurgeonらしい作品を手にしたようだ。
  • Tracklist
      A1 Search A2 Deep B1 Inside B2 Yourself
RA