Louie Vega - Starring... XXVIII

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  • Louie Vegaはダンスミュージック界屈指の重要人物だ。Kenny Dopeと共にMasters At Work(MAW)を結成した彼は90年代のハウスサウンドを定義付け、同ジャンルを世界中のオーディエンスに届けた。MAWの成功のカギは彼らの超人的な制作活動にある。90年代のほとんどの間、ふたりは週7日、1日18時間もスタジオで過ごし、DJをするときだけ出かけていた。武勇伝を語れる人がいるとすれば、それはVegaのような人だ。しかし28曲のソウルフルなハウストラックを収録した彼のニューアルバムでは、これまで以上に精力的な彼の姿がうかがえる。 『Starring... XXVIII』においてVegaは大勢のミュージシャンやボーカリスト、そして、ソングライターたちを指揮している。参加アーティストと収録曲の数からは並々ならぬ野心が感じられる。これまでにもVegaはこの手のプロジェクトを手掛けてきた。高い創造性を発揮したと広く認められているアルバム『Nuyorican Soul』には70人以上ものアーティストがフィーチャーされている。このような共同制作アプローチにより『Starring... XXVIII』のベストトラック"You Are Everything"には素晴らしい結果がもたらされている。同トラックではJocelyn BrownがBlazeの元フロントマンJosh Milanやディスコ界の重要人物James "D-Train" Williamsとハーモニーを成している。さらにMAWの重要作の多くを支えてきたベースプレイヤーGene Perezを加えれば、ソウルフルハウスのスーパーグループの完成だ。"You Are Everything"は混じり気のないゴスペルハウスだが、親しみやすいエネルギーが即座に伝わって来るので、この手のサウンドに関心がないリスナーは敬遠しないでほしい。このトラックはこれ以上ないほど素晴らしい敬けんなダンスミュージックだ。Vegaの最高傑作と言っても過言ではない。 Funkadelic "Ain't That Funkin' Kinda Hard On You"のVegaによるリミックスもハイライトのひとつだ。エネルギーレベルを増し、見落としがちなフックに焦点をあてることで、George Clintonによる原曲を凌ぐリミックスに仕上がっている。これまでにもVegaはこのようにレコードをがらりと変化させてきた。ポップソングをニューヨーククラブ・アンセムへと変化させる彼のセンスに肩を並べる者はほとんどいない。実際、MAW最大のヒット"To Be In Love"は知る人ぞ知るTito Puenteの楽曲をリミックスしたものだ。 他にも素晴らしい場面はたくさんある。"I Deserve To Breath"、"Gift Of Love"、"Angels Are Watching Me"はどれもVegaスタイルの好例だ。とはいえ、一気に28曲すべてを聞くのは大変かもしれない。悪いトラックは一切ないのだが、3時間にわたるノンストップ・ボーカルハウスは誰もが楽しめるものではない。それに収録曲の中には、リリースチャンスを逃したトラックだと感じられるものもいくつかある。"Dance"は、アメリカのゴスペルミュージック界でトップクラスの人気を誇る歌声の持ち主3 Winans Brothers & The Clark Sistersとのコラボレーションだ。おかしなことに、昨年のシングルで登場した"Dance Ritual Mix"の方がはるかに素晴らしいにもかかわらず、ここには"Louie Vega Remix"が収められている。同様に、Josh Milanをボーカルに迎えたトラック3曲も、2012年の"Thinking About Your Body"に比べると物足りなく感じる(個人的には、このトラックは過去10年の中でトップクラスのソウルフルハウスだと思う)。あと"Never Stop"の"Sunset Ritual Mix"も収録されていてほしかった。あのキラートラックはVegaのDJセットでプレイされ続けているが、一度もオフィシャルリリースされたことがない。Roy Ayers、James Mason、そして、Rufus & Chaka Khanたちをカバーしたトラックは楽しめる内容だが、どれも原曲の高みには達していない。それよりも、Convertionによるブーギークラシック"Let's Do It"にハウスのタッチを加えたLeroy Burgessとのトラックの方が素晴らしい。 最近のインタビュー(英語サイト)でVegaは『Starring... XXVIII』によって「この手の音楽を制作しているプロデューサーたちが歌ものをレコーディングしたくなる」ことを期待していたようだ。確かにここにはハウスプロデューサーたちをインスパイアする要素がたくさん詰まっている。しかし現実はというと、そうした人たちの耳に本作が届いていない。『Starring... XXVIII』は主に既存のVegaファンを対象にしているのであって、その意味で本作は成功している。最高の状態にあるVegaは現在もソウルフルハウス界のトップであり続けている。
  • Tracklist
      CD 1 01. Funkadelic - Ain't That Funkin' Kinda Hard On You? (Louie Vega Remix) 02. 3 Winans Brothers & The Clark Sisters - Dance (Louie Vega Remix) 03. Louie Vega - Elevator (Going Up) feat. Monique Bingham 04. Louie Vega - Angels Are Watching Me feat. Bucie 05. Louie Vega - A New Day feat. Caron Wheeler 06. Louie Vega - Magical Ride (Wave of Love) feat. N’Dea Davenport 07. Louie Vega - Gift of Love feat. Tony Momrelle 08. Louie Vega - Heaven Knows feat. Anané Vega 09. Louie Vega - Can We Keep This Going feat. Kaylow 10. Louie Vega - Gimme Some Love feat. Vikter Duplaix 11. Louie Vega - Just The Way I Like It feat. Cassio Ware 12. Louie Vega - See Some Light feat. Nick Monaco & Soul Clap 13. Louie Vega - I Deserve to Breath feat. Adeva 14. Louie Vega - Let's Do It (Dance Ritual Mix) feat. Convertion & Leroy Burgess CD 2 01. Louie Vega - You Are Everything feat. Jocelyn Brown 02. Louie Vega - Together We Can feat. Kenny Bobien 03. Louie Vega - Joy Inside My Tears feat. Josh Milan 04. Louie Vega - Because We Love It feat. Zara McFarlane 05. Louie Vega - Turned Onto You feat. Lisa Fischer & Anané Vega 06. Louie Vega - Do What You Gotta Do feat. Lisa Fischer 07. Louie Vega - Stop On By feat. Lisa Fischer & Cindy Mizelle 08. Louie Vega - Slick City feat. Cindy Mizelle & Lisa Fischer 09. Louie Vega - You’ve Got It Bad Girl feat. Josh Milan 10. Louie Vega - In The Morning feat. Adeva 11. Louie Vega - Been Such A Long Time Gone feat. Josh Milan 12. Louie Vega - Es Vedra feat. Luis Salinas 13. Louie Vega - Everlasting Love feat. Diviniti 14. Louie Vega - Ain’t No Stoppin’ Love feat. Byron Stingily
RA