Micachu - Taz And May Vids

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  • Mica Leviは多様な経歴の持ち主だ。彼女は3人組ユニットMicachu And The Shapesにて、電子回路を改造して生み出す削ぎ落したポップサウンドや、弦楽器のアンサンブルに向けたクラシック作品、そして、Jonathan Glazerによる不穏なSF映画『Under The Skin』の音楽を制作してきた。複数の領域に渡るこうした経験は、彼女が新鮮なアイデアに溢れていることを意味しており、Demdike StareのレーベルDDSに提供した7曲入りEP「Taz And May Vids」にはそれがまさにあてはまる。今回のフロア仕様のサウンドからは、シンセ、シーケンス、ドラムをいつもとは違う方法でプログラミングしようとしていることがうかがえる。ジャンルに縛られない彼女の全体的なアプローチにより、非常に新鮮なEPが実現している。 彼女と頻繁にコラボレーションを行っているシンガーのTirzahをフィーチャーした"Go"が際立っている。このつんのめった2ステップの魅力は、Leviによる統制された混沌だ。鈍いドラムサウンドがもたついたり、スキップしたり、今にも崩壊しそうにぶつかったりしている。メロディがスケール上を狂ったように素早く上下する一方で、低い音域のシンセがオーバーヒートしたかのようにガタガタと震え、じっとりとしたサウンドを鳴らしている。"Dare You"も同様に要領を得た複雑なプログラミングによって素晴らしい混沌がまとめられている。2、3分という短い曲尺のため、収録曲の長さが唯一の欠点だ。幸い、"Dare You"のつんのめったガラージグルーヴはDemdike Stareのエディットによって3分長くなっている。彼らが原曲に対してそれほど素材を足し引きしていないのは賢明な判断だ。 残りのトラックでは徐々に奇妙な内容になっている。"Chime 7!"の中心にあるのは、不協和に響くピアノと簡素なロックビート上でいたずらにかき鳴らされるギターリフのループだ。ぶっとんでいるのが"Trip6love"だ。船酔いをもよおさせるほど小節がゆらゆらと揺らぐ中、Tirzahが型にはまらないスタイルで自由に発声している。Brother Mayがパトワ語で歌う"More Red"とこの2曲は「Taz And May Vids」に個性を与えているが、当初の雰囲気からは外れている。"Go"と"Dare You"は荒々しさと機能性を当時に実現していて素晴らしく、フリークアウトしたオーディエンスに向けて放たれるパーティートラックだ。しかし、ここに挙げた3曲は穴埋め的なトラックに感じられる。ダンスフロアにとっては鋭さが足りず、没頭するには深みが足りないのだ。
  • Tracklist
      A1 Intro A2 Go feat. Tirzah A3 Dare You feat. Tirzah A4 Chimes 7! B1 Trip6Love feat. Tirzah B2 More Red feat. Brother May B3 I Dare You (Demdike Stare Edit)
RA