Get Perlonized! in Berlin

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  • Get Perlonized!は、ベルリンの中でも最も古くから続くパーティーの1つだ。Panorama Barがオープンした2004年以来、毎月第1金曜日に開催されているこのパーティーには熱狂的なフォロワーが存在し、毎回必ず参加するような大勢の筋金入りの常連客(と、その他数百人)で、盛り上がりを見せている。彼らが熱烈なファンを抱える理由は一目瞭然だ。まず第一に、創設者でありレジデントであるZipとSammy Deeの2人は、独特でありながら包括的なサウンドをプレイすることで知られる。バウンシーで風変わり、そして決まってオブスキュアなその音楽は、いわゆるハウスミュージックに見られる一般的な要素(大きなブレイクダウン、派手なメロディー、ドラムロール等)を求めないリスナーに向けられたものだ。万人受けする音楽ではない。同パーティーについてよく分かっていない初心者は大抵、Panorama Barが最も混み合い、最も居心地の悪い空間となる早い時間に到着する。そしてすぐさま、決して来ることのないであろう、ビッグで分かりやすい瞬間を期待し始める。 '90年代半ばから'00年代半ばにかけて、ミニマルはダンスミュージックの中でも新鮮なサウンドであった。当時DJたちがプレイしていたトラックの多くは、既にリリース後何年も経っていたにも関わらずだ。一時期、ZipとSammy Deeの“Less is more”な姿勢は先進的であると広く捉えられていたが、今となってはそんなことはなくなった。良くも悪くも、現在Get Perlonized!はピュアリズムと伝統のかなめと見なされ、ミニマルでルーピーなハウスミュージックを好む人々に愛されている。また、ZipとSammy Deeに加えて毎回他のDJやライブアクトが1、2組出演するが、そのほとんどはお馴染みのメンツだ。と言うのも、Get Perlonized!でプレイする為には、結束の強いロスターで知られるレーベル、Perlonから作品をリリースしている必要があるからだ。従って、ゲストにとってはダンスミュージック界の先端に立つという貴重な機会となる。多くの場合は、経験豊かでありながら慎ましく、そして長年かけて集められたレコードコレクションを持つDJ(Sonja Moonear、Vera、Fumiya Tanakaなど)である。そういうわけで、新しいアーティストが加入した時、我々の耳はダンボになるのだ。 今月は、それに該当するのがBinhだった。ベルリンを拠点に活動するDJの彼は、昨年2月にEP「Visio」を発表して以来、Perlonクルーの一員となった(彼はそれ以前にも一度Get Perlonized!に出演しているが、1月2日という微妙なタイミングであった為、パーティーの常連客の多くはベルリンにいなかったか、あるいは大晦日のダメージから復活している最中だった)。DJとしての彼のサウンドは、異質でフューチャリスティックであり、ありえないほどオブスキュアなハウスやテクノ、エレクトロで構成される。どれも素晴らしいトラックなのだが、彼が1つ1つの曲を掘り起こすのにどれだけの時間がかかったのだろうなどと考えると、本人に曲名を尋ねるのは気が引けてしまう。更に、それらのトラックが機能的で踊りやすいことも、BinhがDJとして非常に注目されている理由の1つだ。彼が金曜日のPanorama Barでプレイしたそのサウンドは、筆者を含む多くのクラウドにとって、ここ最近で1番楽しいGet Perlonized!という結果をもたらした(他のイベントとスケジュールのバッティングがあり、同パーティーがPanorama Barで開催されるのは2ヶ月振りのことだった)。 筆者が到着したのはSammy Deeが出番を終える頃だった。周りに聞いたところ、彼はスムースで熟慮されたウォームアップセットをプレイしていたようだ。Binhは午前4時に登壇。同パーティーの多くのゲストアクトと比べると、テクノ色の強いセットを披露した。 タフで転がるようなビートの上に、歪んだ、活発なベースラインと、あらゆる種類のクレイジーなシンセサウンドがこだまし、その中でUnderground ResistanceによるMaurizio "Ploy"のリミックスや、こちらのウェポンがかかった。ペース配分も構成も素晴らしく、ベルリンのクラウドにとってはBinhの大箱でのプレイを見る貴重な機会となった(彼はベルリンでよくギグを行なっているが、普段はClub Der VisionaereやHoppetosseなどの小箱でプレイする事が多い)。 午前8時頃に交代したMaayan Nidamは、キャリア初のライブセットを披露。ベースヘヴィーでルーピーなテクノの、素晴らしいセットを展開した。Nidamは近頃、こういったジャンルに没頭しており(Nina KravizのレーベルTripからも新曲のリリースを予定しているようだ)、ライブではその結果が証明されていた。Binhのアブストラクトな選曲の後だったこともあり、アップテンポで勢いのある彼女のセットは良い気分転換にもなった。 Nidamの後にはZipが登場。古いトラック(最近再発されたTerrence ParkerによるDJ Slym Fas "Memories"のリミックスや、DHSの"I Am Your Control")から新曲(Binhの"Buyout"、そして間もなくPerlonから発売されるFumiya Tanakaによる最新アルバムの収録曲)をドロップした。正午を過ぎて間もなくBinhがZipの立つブースに加わり、我々の予想通り(そして待望の)B2Bがスタート。Binhは一段と奇妙なレコードの数々を引っ張り出し、それに負けじとZipもまた不思議な曲をかけた。Get Perlonized!では最近、B2Bが恒例行事となっているが、Zipのソロセットよりも良い内容になることは稀だ。と言うのも、ほとんどのゲストは彼の外科医のようなミキシングや、パーティー終盤の素晴らしい選曲についていけなくなるからだ。しかしBinhの場合は違った。彼は、十分にディープなレコードバッグと、これほど深い時間にどんな音楽が合うのかを判断できる耳を持った、数少ないDJのうちの1人である。2人はグリッチーなテックハウスから、幻覚的なテクノ(Minimal Manの"Stay On")、そしてPerlonの中でも一風変わったトラック(Thomas Melchiorの"Meditation 5")までをプレイし、筆者がここしばらくの間でPanorama Barで聴いた中でも最高のダンスミュージックの時間を実現してくれた。 毎月同じことなのだが、残念ながら今回もまた彼らがプレイしている最中に同クラブの気難しいナイトマネージャーがブースに入り、パーティーは午後3時に終了予定でもうすぐその時間だということをイライラしながらZipに忠告した。これは、その他のことに関してはほぼ文句無しのこのクラブにある、1つの不思議な慣習だ。DJブースの中にいる彼の侵略的な存在は、クラウドに対してネガティブな影響を与えてしまうだけだと思うのだが。一見平静を保っている様子のZipとBinhはしばらくプレイを続け、最後はZipが、先ほどとはまた違う穏やかなThomas Melchiorの名曲で、15時間に及ぶ長丁場となったパーティーを締めくくった。自分たちがMaayan Nidam、Sammy Deeと共に、しばらく我々の記憶に残るであろうパーティーを実現したという自覚があるのか怪しいほど非常に謙虚な、笑顔でボサボサ頭のマスターとベイビーフェイスの徒弟の2人という、そんな愛らしい最後の絵にピッタリのサウンドトラックとなった。
RA