SASAKI Hiroaki - Icon EP

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  • 岡山出身で現在は東京で活躍するアーティストのSasaki Hiroakiは、80年代のニューウェーブに影響を受けながらも90年代からはクラブ・ミュージックに魅了され、そして2003年頃からは自身で制作した曲を発表して活動の場を広げている。MinusのレジデントパーティーであるWombで開催されたMinus Connectedにも出演したように音楽のスタイルはミニマルで、彼が主宰するYotsume Musicからリリースされた過去の作品を聴く限りでは、確かに生楽器のサンプルを取り入れながらも隙間が浮かび上がるミニマル・テクノを披露している。 本作はYotsume Musicから2年ぶりとなる作品で、過去の作品よりも更にミニマルの精度を高めながらディープさも加わったミニマル・テクノへと進化している。ぼんやりとした淡いシンセの反復が覚醒感を誘い、そこに湿ったようなキックやスネアの端正な4つ打ちがリズムを刻む"Circle"は何か展開らしい展開がある訳ではなく、ハイハットやパーカッション等の抜き差しによって微細な変化を付けて、出口の無い迷路を彷徨うようなディープさがある。"Forever"ではマイナー調のピアノにディレイを用いて層を強調したメロディーが幻想的で、トランス感とでも表現すべき覚醒感がより強調されているが、それは決して派手な鳴り方をせずに真っ暗闇の中に薄っすらと花弁が開くような美しい鳴りをしている。裏面の"Icon"では膨張したキックから骨太さが滲み出ているが、それでもやはり薄っすらと現れるパッドには静謐さがあり、最後の"Kaii"ではゴツゴツとした荒く揺れるビートの上にぼやけたような幽玄なパッドが催眠的な効果を付け加える事で、深い世界へと誘われるミニマル性がより一層強まっている。どれもこれも音圧や勢いではなく音の隙間を活かす事で、催眠作用の強い反復のグルーヴが活きる事になり、単純にも思えるミニマルが恍惚を誘発する事を実証しているのだ。
  • Tracklist
      A1 Circle A2 Forever B1 Icon B2 Kaii
RA