Contact Opening Party in Tokyo

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  • 渋谷の喧噪をくぐり抜けた少し先、意識しなければ通り過ぎてしまいそうな道玄坂の立体駐車の地下深くに、新たなイベントスペースContactがオープンした。長蛇の行列とエントランスを抜けると、ワンフロアで構成されたスペースの右手にはすぐラウンジとセカンドフロアの“Contact”、左にはメインフロア“Studio”へ向かう廊下がある構造だ。 “Contact”はRey AudioのスピーカーからDJブースの枠、バーの雰囲気も含めて、かつての代官山Airがコンパクトになって復活したような印象だ。サウンドもラウンジというには本格的すぎるパワフルさ。一番手を務めていたのは、Rainbow Disco Clubのメンバーとしても活躍するSisi。100BPM前後から緩やかにテンポを上げていく、持ち味を活かしたディスコ・ハウスセット。キャッチーなフレーズは抑えつつも、匂い立つような色気を感じさせる。 満を持してメインの“Studio”に入ると、天井低めで抑えられた照明、フロア中央に鎮座する大柱など、かつてのSpace Lab Yellowやelevenを思い起こさせる空間が現れた。フロア前方に行くと天井の高くなった箇所にAirのメインフロアを思わせる巨大なミラーボールが設置され、まさに都内の名店の遺伝子を引き継がれているよう。サウンドシステムはラウンジ同様Rey Audioで統一されているが、フロアの四方に計8台設置されたビジュアルはまさに圧倒的だ。フロアの規模は先述の店舗よりもさらに広く、ラウンジ同様木製の床ということもあり、ゆとりをもって長く踊ることを想定した造りだと思われる。オープニングアクトは国内のみならず近年では世界においてもDJとしての存在感が高まるDJ Nobuが担当。この日はほとばしるエネルギーに満ちた、デトロイティッシュなテイストを交えたテクノセット。Mayday ”Sinister”といったクラシックも交え、続々訪れるオーディエンスとともに箱のサウンドを創りあげていく。序盤はオープン直後ということもあり中域が飽和しているように感じたが、中盤のシカゴテイストなグルーヴをかける場面では、システムとの親和性もあるものの、ちょうど良い音圧と抜けになっていた。 “Contact”へと戻ると、Sisiに続いてNehanがバウンシーなミニマルからスタート。客足の勢いに加え、ドリンクを購入できるのはラウンジのバーのみということもあり、メインに劣らない人が行き交う中でのDJだったが、状況を読みつつアッパーな展開へと移行、この日のターニングポイントを生み出していた。DJ Nobuのセットの終盤には客足はまさにピークに達しており、ラウンジ横の喫煙スペース、廊下、そしてメインフロアまでほぼ人で埋まっているような盛況ぶりであった。絶好な状況でバトンを受け取ったArtefaktはTB-303やMoogのモノシンセらしき機材、そしてAbleton Liveを組み合わせたセッティングで、美しいパッドやアシッドベースが彩るオランダらしい武骨なポスト・デトロイトテクノでさらに登りつめるようなサウンド。Functionは名が表す通りの機能性に特化したミニマル・マシングルーヴ。ライブの流れからパワフルさを受け継ぎつつ、装飾をそぎ落とすストレートなテクノをひたすら繋いでいく。 しかしこの日の後半は、酸欠寸前かつ淡々とした展開の“Studio”にはなかなか長居できず(ドリンクを持ち込めないのも残念に思った)、バーも近い“Contact”に居心地の良さを感じてしまった。DJ陣も素晴らしく、Ryosukeの骨太な2拍4拍のビートを基調としたストレートなハウス・ミニマルセットは、サウンドの質も相まってメインと比べても遜色ないほどの熱狂ぶりを見せていた。ラウンジの〆を担うTenは、ストイックな流れからよりファンキーなハウスへと移行し、強烈なアシッドハウスまで展開しながらも足を止めない辣腕ぶりを見せる。ピークにはR&BヒットのNY系リミックスまでプレイする、ダイナミックな振れ幅はまさにベテランの魅力と言えるだろう。 オープンということもあり、サウンドや設備面はおそらく最良の状態ではなかったはず。しかし、予想以上に満足して遊べる空間がすでに形作られていた。エントランスからセカンドフロア横のラウンジスペース、各部屋をつなぐ廊下は、系列店のSound Museum Visionとも似た雰囲気がある。しかし装飾を排し、むせ返るような熱気と暗闇に満ちたメインの“Studio”は、ここ数年都内ではなかなか感じられなかったアンダーグラウンドなムードに満ちていた。当日訪れていた人は、フロアを一目見て心奪われたのではないだろうか?歓喜の声を上げる人々の姿からは、先述のAirやeleven、Yellowといったかつての名店へのノスタルジーだけではなく、そこで見た夢の続きがここにあるかもしれないという期待も感じた。 Photo credit: Alexis Wuillaume
RA