Cottam - Breaking Through The Pain Barrier

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  • 音楽が肉体的にも精神的にも救済となることは珍しくない。しかし、Paul Cottamの「Breaking Through The Pain Barrier」ほどパーソナルな(もしくは異質な)ケースは滅多にない。2009年、プレストン生まれのプロデューサーである彼は多発性硬化症(中枢神経系に影響を及ぼす神経性の症状)と診断された。そして自宅療養することになった極めて大変な時期に彼の最新EPが制作された。彼はコンピューターに向かうこと以外何もできない状態だった。 苦悩を表現する際、通常、ポップスやブルースといったジャンルがその手段となることが多い。「Breaking Through The Pain Barrier」には制作時の状況を伝えるような要素がほとんどない。なぜなら、Cottamのアシッドハウスとアフロセントリックなリズムはリスナーに踊ることを求めているからだ。Cottamの精神状態をうかがい知る手がかりは"Encephalomyelitis Disseminata"の冷ややかなコーラス音や、もしくは、"Breaking Through The Pain Barrier (Mantra)"における瞑想的な漂いを嵐のように遮るSpace Invader風シンセに隠されているのかもしれない。どのようにして、そして、なぜ制作されたのか、という点を抜きにしても「Breaking Through The Pain Barrier」はCottamによる新たな傑作であることに変わりはない。
  • Tracklist
      A Breaking Through The Pain Barrier (Mantra) B Encephalomyelitis Disseminata
RA