Woo - Awaawaa

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  • 何十年もの間、Wooによって制作された音楽は手の届かない場所を漂流していた。1970年代以降、イギリス人のMark IvesとClive Ives兄弟はサウスロンドンの小さなテラスハウスに閉じこもり、奇妙なホームレコーディングに明け暮れていたが、その音楽が身内以外の人々に聞かれることは一度もなかった。Wooの音楽は同世代でいえばThe Penguin Café Orchestraに最も類似している。Brian Enoが主宰するE.G.は彼らにとって最適なレーベルになりえたのだろうが、最終的に彼らは自分たちの手で楽曲をリリースすることにした。それ以降、時流の外で漂うことになった彼らを追跡したり、突き止めるのは容易なことではなかった。 Wooのディスコグラフィーがしっかりと再発/再評価され始めたのはつい最近(2012年)のことで、インディレーベルのDrag Cityを皮切りに、その後、イギリスの骨董ダンスミュージックを専門とするEmotional Rescueによる再発が続いた。そして今回、この4年間で5枚目となるWooの再発盤が届けられた。手掛けたのは、同じく分類不可能なアルバムMariah『Utakata No Hibi』を再発したレーベルPalto Flatsだ。ライナーノーツによると、『Awaawaa』の歴史は、Wooの活動初期にあたる70年代中期~80年代初頭のレコーディングにまで遡るようだ。 Wooの酩酊した音世界をカテゴライズするのは難しい。そのサウンドはアンビエントやエレクトロニックミュージックだが、なによりも前面に打ち出されているのは爪弾かれるギターやウッドウィンドといった楽器演奏だ。"Green Blob"ではそこへフェイズシフトがかけられ、音色がどこで始まり、どこで終わっているのか聞きわけられなくなっている。Wooのサウンドはコズミッシェの柔らかな一面に類似しており(Clusterの『Sowiesoso』や、初期Faust、Canの"Ethnological Forgery Series"を想像してみてほしい)、軽やかなギターラインはDurutti Columnなどを彷彿とさせる。ニューエイジのファンなら『Awaawaa』に漂う落ち着いた感覚を楽しめるだろう。"The Goodies"など尺が5分間あるトラックでは、簡単に我を忘れられるほか、ついつい旋律を口ずさんでしまう。 "Tick Tock"、"Fun, The Final Frontier"、そして、表題曲のサウンドは排水溝の奥から聞こえてくるジャズトリオを聞いているかのようだ。そのため、本作のようなアルバムがエレクトロニックミュージックファンにどれだけアピールできるのか、という疑問が湧くかもしれない。Ives兄弟による捩じれた音作りは、Wolfgang VoigtによるプロジェクトGasを彷彿とさせる(Gasでは頻繁に、クラシックピアノやブラスバンドの録音物を多くのエフェクトにくぐらせて輝く霧に変化させている)。Voigtが真夜中の森ではなく昼の太陽を好んでいたとしたら、Gasは『Awaawaa』のようなサウンドになっていたかもしれない。その作風において、ビートの無い輝かしい未来を描き出すWooを『Pop Ambient』の遠い親戚ということもできるだろう。
  • Tracklist
      A1 Odd Spiral A2 Green Blob A3 Mobile Phone A4 The Goodies A5 Homage to Matta A6 Sympti A7 Tick Tock B1 Awaawaa B2 Back on Track B3 Ruby Past Lives B4 Wobbly B5 Robots Dancing B6 Babalonia B7 Sailing B8 Fun, The Final Frontier B9 Fanfare
RA